演目 歯並びのきれいな女の子
観劇日時/10.5.22.
公演形態/コンカリーニョ・プロデユース
作/イトウワカナ 演出/泊篤志 
演出助手/弦巻啓太・南参・イトウワカナ
舞台監督/高橋詳幸 照明/相馬寛之 音響/大江芳樹
舞台美術/足立高視 衣装/佐々木青 小道具/米澤春花
仏具コーデネーター/石川亨信 舞台写真/高橋克己
宣伝美術/本間いずみ プロデユーサー/小室明子
劇場名/札幌・西区・コンカリーニョ

ある家族に訪れた招かざる訪問客
飴菓子を製造している町工場の主人が亡くなった。納骨法要の日に、見知らぬ
歯並びのきれいな女の子・さおり(=飛世早哉香)が遠慮がちに訪ねてくる。
集まっているのは、未亡人になったみずえ(=小林なるみ)、長女のまいこ
(=福地美乃)、まいこの弟で長男のしんじ(=堀内浩水)、の3人の遺族と、
まいこの婚約者で歯科医の光男(=木村健二)という準遺族である。
そして故人の片腕として一緒に仕事をしていた吉田(=宮澤りえ蔵)、その息
子の優作(=かとうしゅうや)。
さらに納骨法要の当日に発表を指定された、遺言書を預かっている司法書士の
大輔(=小林エレキ)が来る。
さおりの正体が判らず興味津々の一同。だが観ている観客は、さおりは亡くな
った父親の隠し子であることはすでに宣伝チラシで知っているが、それは余り
問題ではない。
飴工場の主人は子供たちに飴ばかりを食べさせたので、二人の子供は歯が悪く、
さおりに劣等感を抱く。逆にさおりはほとんど父を知らないからかえって羨ま
しい。これは嫡出子と庶子との対比が巧く表現されている。
事情が判って傷つき混乱する三人の家族。辛うじて立ち直り、さおりを受け入
れようとする一同……。突然現れた肉親への戸惑いと理屈抜きの愛情……
しんじと優作との秘密の関係、歯が極端に悪い女とその婚約者の歯科医など、
設定と構成の巧さで引きつけて魅せるのだが、しんじと優作がホモの関係らし
いことは早い段階での優作の異常な言動の続出で察しられる。
気になるのは、今の時代、飴作りの町工場というのも現実味の薄い話で、これ
が独特の個性的な飴菓子ならば納得がゆくが、見たところ何の変哲もないただ
の飴玉だから説得力が弱い。工場の後継者を巡る駆け引きの話もアナクロだ。
シリアスだが諧謔味が強く、設定の巧みさと、スピード感が溢れてリアリティ
の強い演技力で盛んに笑わせる。
家族を突然襲ったあり得る騒動としての不条理を巡る娯楽劇として一定の水準
にあるということであろうか。