演目 ELEVEN
観劇日時/10.4.10.
劇団名/full breech
作・演出/かとうしゅうや
照明/青木美由紀 音響/植松尚規 衣裳/櫻田悠水
小道具/三島祐樹・原田充子
劇場名/札幌・中央区・シアターZOO

創り損なった神話の世界
おそらく世界から取り残されて、たった二人だけで生き残った兄弟(=かとう
しゅうや・畠山亮二)が、お互いの感情の行き違いから壊れそうで何とか繋が
っていく課程を描く物語。だから話そのものは実に古典的なストーリィなの
だ。
この物語の設定は、文明の発達が極限を越えた時点で世界が破滅した状況から
始まり、この世に兄と弟のただ二人だけが生き残ったという世界。
とても非現実的な、もっと言えば現実を超えているのになおかつそれでも非空
想的な世界だ。想像でも考えにくい設定だ。そこで生き残った兄と弟の二人が
何とか工夫して生きている。それもまた想像しにくい生活だが、そこへ思いが
けなくエリという女性(=知北梨紗)のSOSの音声を聞く。そこから事態は
急変する。
世界から孤立していると思いこんでいた兄弟に新しい世界が広がる。弟は声だ
けのエリに恋をする。兄もそれを理解はするけれども理性的には許されない。
ここで兄弟の確執が派手に演出される。この辺は見物(みもの)だが、何か突
然に豹変したという感じもする。
いかにも神話的なのだが一番に思うのは、この兄弟の確執をなぜこんな架空世
界に設定しなければならないのか、その理由が分からない。このテーマはリア
ルな現実の社会劇として充分に表現できる素材だと思われるのだから。
それは二人の衣裳にも感じられる。時代も地域にも存在しないと思われる不思
議な衣裳で、機能性も考えられない一方、ズボンだけがごく普通の現実的な作
業衣であり、履物も現代の普通の履物で、なんともチグハグな印象が強い。い
ったい何に拘っているのかが判然としない気持ちが強く残ってしまった。