演目 アメリカ
観劇日時/10.4.10.
劇団名/すがの塾 公演形態/6期発表公演
脚本・演出/すがの公 照明/山本友佳
音響/小川しおり 音響補佐/松下綾華
舞台美術/すがの公 制作/井嶋マキ子
企画・制作/ハムプロジェクト
劇場名/札幌・中央区・山口ビル内・アートスペース201E


若さのエネルギーとスピード感覚
小学校の卒業式で子供たちが将来の希望を述べている。男子は医者・警官、女
の子は看護師・花屋など普通な希望の中で、一人の男の子は「アメリカ」と答
える。
「アメリカ」とは何を想定していたのか? 大きくて強いものか? 21世紀の今
時、珍しい目標だ。でもユニークで頬笑ましいとも言える。
劇はその少年の成長物語だ。といってもリアリズムには展開しない。12人の群
衆が様々な役柄を次々とスピーディに演じ分けて、エネルギッシュに話が進む。
後半になって一匹の野良犬の保護を巡る葛藤と挫折の話になると、いささか矮
小化した展開にはなるけれども、それはそれで誠実な心情が幼く愛おしい。
さてご存じの通り、かの『富良野塾』が閉塾した。記念に『谷は眠っていた』
を上演した。これは26年前に人跡まれな山中を開いて作り上げた富良野塾の苦
闘の歴史であるが、この話は、悪く言えば自己顕示の話に見える。
それに対して、この『アメリカ』は、見えない未来に向かう少年たちの葛藤と
苦闘と挫折の軌跡であると思える。
もちろん『富良野塾』の技術・規模・方法論・知名度などからみると『アメリ
カ』は児戯にも等しいかもしれないが、『富良野塾』がなくても、すでに第6
期を迎えた『すがの塾』があるぞと言いたい。むしろ取り上げた題材の劇的イ
ンパクトとそれに誠実に応えた若者たちを観る限り期待は大きいのだ。楽しみ
に見守っていきたいと思う。
出演者は、三浦玲未・飛世早哉香・後藤克樹・外崎香織・牧野千里・小池瑠莉・
木山正太・大澤恵衣・びす子・荒井翔伍・東谷良・彦素由幸(特別出演)