演目/腐 食

観劇日時/10.3.31.
劇団名/Theater・ラグ・203
上演形態/水曜劇場 Vol 1 再演
作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸
音響オペ/斉藤わこ 照明オペ/瀬戸睦代
宣伝美術/久保田さゆり
出演/柳川友希
劇場名/ラグリグラ劇場

奥の深さ

 
この芝居、何度観ただろう? 調べれば分るが多分十回以上は観ているはずだ。まったく同じ脚本なのに、良い芝居は何度観てもグレードアップしており違う発見がある。
それは単に僕が初見で見通せなかったというだけのことかも知れないが、何度みても面白いというのは不思議だとさえ思える中々出来ない体験だ。
そこで今日の新しい発見は二つ。今まではこの死刑囚の心情を分りきった必然の経緯として捉えていた。それが今日は、時間の経過を通じてリアルに伝えられたことだ。この心情は普通の生活の中ではほとんど経験は出来ない。
この人物が連続殺人を行って行かざるを得なかった心の揺らぎに重いリアリティがあるのは、その動きや台詞の隙間がたっぷりと埋まっていることにもあると思われる。これは演技者・柳川友希の成長そのものである。
さらにもう一つは、僕が考える一人芝居表現方法の第三の方式を部分的に取り込んだこと、一人が何役をも演じるという形が高度に発達したと思われるのであるが、これは3人の先輩が試行錯誤しながら積み上げた結果を継承していると思われる。
そして柳川友希がこの芝居を演じるのに参考にした3項目に『落語』『JAZZ』『初演の鈴木亮介』とあったので、いずれの項目もわが意を得たのであった。
一番印象的だったのは落語の表現法である一人多役を演じたことであろう。
レパートリィ・システムの成功例として評価したい。水曜劇場の大きな功績であろう。




 3月の舞台から 

今月は収穫が多く選ぶのに困った。その中から次の作品を挙げる。(上演順)

ビビアンにあいたい  朝日サンライズホール企画
  市民劇団としては異色の本であり演技であった。

水の戯れ  清水企画
小品だが、独特であり魅力的な舞台だ。

春の夜想曲  TPS
小津安二郎を思わせる諧謔の中の哀愁と心情が、内容の深さを静かに訴える。

腐食  シアター・ラグ・203
レパートリーシステムの成果が大きい。

珊瑚の指  リアル・アイズ・プロダクション
何かを象徴する人間関係の複雑な存在。