演目/鍋の中

観劇日時/10.3.22.
札幌公演主催/NPO法人コンカリーニョ
劇団名/札幌・yhs + 福岡・万能グローブガラパゴスアイナモス
作/南参+川口大樹 脚本アドバイザー/泊篤志・橋口幸絵  演出/(札幌)南参 (福岡)川口大樹
舞台監督/高橋詳幸 舞台美術/高村由紀子 照明/相馬寛之 音響/橋本一生 宣伝美術/本間いずみ 制作/イシハラノリアキ プロデューサー/小室明子
劇場名/札幌・琴似・コンカリーニョ

ウエルメイド・コメディ

 
札幌の劇団「yhs」の南参と、福岡の劇団・通称「ガラパ」の川口大樹の二人が、メールでやり取りしながら作った共同制作戯曲『鍋の中』である。
その戯曲を、それぞれの劇団が舞台化して、福岡と札幌とで二つ並べて上演するという企画だが、さてどんな個性が観られるのか……
九州ラーメンの職人・鶏郎(=能登英輔)は札幌で新しい九州ラーメンの店を出したい。妻の月子(=青木玖璃子)は札幌出身で懐妊中だ。
鶏郎の妹のはな(=福地美乃)の恋人・風介(=小林エレキ)は札幌ラーメンの職人だが、経営に失敗して莫大な借金を背負い、その店を閉めて恋人の兄である鶏郎に貸して九州ラーメンの制作試験をさせている。
その経過中でのてんやわんやの騒動が、麺屋の春高(=丹治誉喬)や貸し金取立屋(=すがの公)の登場などで、ますます混迷に陥る。
その展開の、ますます深みに嵌る悲劇を喜劇的に表現するわけだ。前記の配役は「yhs」バージョンである。
さて冒頭で「ウエルメイドコメデイ」と言ったが、実はそう上手く展開されているわけではないと思う。
例えば莫大な借財はどうなったのか、とか取立屋がいつの間にか居なくなったのにそれが縛り上げられていて何となく去ってしまうという設定はかなり不自然だったりする。
こういう物語では、微細な設定にリアリティが不足すると面白味が大いに殺がれる。その辺に不満が残るのだが、この企画自体は大変に興味がそそられる。
「ガラパ」バージョンの出演者は、椎木樹人・松野尾亮・多田香織・横山祐香里・阿部周平だが、配役は不明。
僕が観た限りではそれほど決定的な違いは感じられなかった。「yhs」の濃厚な味に対して「ガラパ」は淡白な雰囲気であったような気がする。
札幌の劇団は、札幌へ九州ラーメンが進攻する話なのだから、福岡の劇団は福岡へ札幌ラーメンが出店するという話の方が面白かったのではなかったか。
あるいは逆でも良いが、両方の話が全く同じというのは曲がない。「yhs」を観て、その後「ガラパ」を待つ間、どの手で演じるのか期待したのに、全く同じだったというのは期待外れであった。もっと楽しませてほしかった。または同じ戯曲でも全く違った舞台が観たかった。
「yhs」の舞台に、九州ラーメンの職人で鶏郎の亡父(=城島イケル)が亡霊として息子の仕事を心配するという役柄で台詞なしで出るが、もっとこの役を上手く使ったら有効だっただろうが、今回はただ出ているだけで意味不明。