映画/パレード

観劇日時/10.3.17.
原作/吉田修一 監督・脚本/行定勲 音楽/朝本浩文
撮影/福本淳 照明/市川徳充 録音/伊藤裕規
美術/山口修 装飾/大庭信正 編集/今井剛
その他/スタッフ多数
映画『パレード』製作委員会
劇場名/札幌・たぬき小路・シアターキノ

現実離れした現実のメタファー

 
北海道新聞の映画案内には「平穏な日常を侵す凶兆」というタイトルで、「(略)怖くない、怖くないと自分に言い聞かせながら生きていくほかない現代人の寄る辺なさが、ひりひりと痛い。(略)」という紹介記事。
同じく朝日新聞は「ともに生きるとは何か」というタイトルで、ルームシエアで暮らす5人の男女は何故ともに暮らすのかという観点から、「(略)人は誰かとともに生きるためにまず一人である必要があり、逆にともに生きることで自身がいかに一人であるかを学ぶ。(略)」と書く。
学生(=小出恵介)、映画会社の会社員(=藤原竜也)、雑貨店店長で自称イラストレーター(=香里奈)、売り出しの俳優に恋一筋の女(=貫地谷しほり)、そしてそこへ転がり込んだ男娼(=林遣都)の5人が暮らす2LKマンションの一室。最初の4人だって、一人ずつ何時の間にか同居していることになったような間柄だ。
実際に観た映画の印象だと、具体的に彼らが何を考えているのかが、ほとんど判らない。いやそれが判らないのがこの人たちの在りようなのかも知れないが、その現実離れのした日常がいかにも不気味で想像外の生活であるとしか見えない。共同体というものが幻想ではないのかという疑問……
映画ではどうしても良く判らなかった彼らの心情や関係性を、もっと深く知りたくなって、ついに原作本を買って読むことにした。
一度だけとりあえず通読したのだが、この摩訶不思議な5人の共同生活、特にラストに起こる事件には仰天する。それは映画で知ってはいたのだが、知っていながらなお愕然とする衝撃であったのだ。再読しよう!