演目/ビビアンにあいたい

観劇日時/10.3.6.
劇団名/朝日サンライズホール自主企画 公演回数/芝居で遊びましょう♪ 第7回作品 公演形態/北の元気舞台(北海道舞台塾)
作・演出/イナダ 演出助手/江田由紀浩 美術プラン/野村たけし 美術製作指導/川谷孝司 音響/岡崎浩章 照明/高橋正和 その他大勢
劇場名/札幌・琴似・コンカリーニョ

父と娘たちの人情劇

 
妻(=上村夕紀子)と千秋16歳と香澄11歳の二人の娘を残して、父親(=小玉昌宏)が家庭を去ったのが今から20年前、まもなく過労で母が亡くなると叔母夫妻(=中岡辰見・森川理加子)が親代わりになって育てていた。 
5年後、千秋・21歳(=佐々木彩歌)と香澄・16歳(=田渕優茉)になった二人に突然父親が会いたいと言ってくる。その父はオカマのビビアンであって、父であるママのその店には三人の従業員のオカマ(=富田耕一郎・鈴木和彦・水嶋稔・田渕浩義)と常連のオコゲ(=佐藤百合子)たちが居る。思春期の二人の娘は強烈に反感を持ち受付けない。
さらにそれから15年、すっかり老いて施設に生きる父親からもう一度会いたいという連絡がある。今はすっかり落ち着いて幸せな結婚 (夫=柿崎清澄)をした千秋(=五十嵐有紀)、看護師の仕事をしている香澄(=大島しのぶ)、それぞれの生活が安定した二人はやっぱり父親に会いに行くことにする。
27人の出演者、しかもオカマとかキャパクラ嬢とかリアリティのとり難い役柄を、自然体で演じたこの市民劇団にはちょっと驚いた。演出者の言葉によると、普通のアマチュア劇団として演出したそうだ。自然にその要求に応えている彼らたちにビックリする。
オカマのニカウさんとか、父親の少年時代の劇中劇『風と共に去りぬ』のクラークゲーブルとか、当て書きしたような配役が遊び心を満喫させる。それに少年時代の演劇が如何にも下手なのが、本当に下手なのか、少年時代だから下手なのを演出したのか微妙なところ。
もう一つ感心したのは、士別市朝日町という地域性をほとんど出していないことだ。これを下手にやると鼻持ちならないものが出来る。このように普遍性のある題材を扱ったことがクオリティを保障している面もあると思う。もう最近では良くも悪くも故郷の英雄伝とか伝説とかを扱うのが少なくなったのではないか。なぜだろう?
父親がなぜオカマになったのか、ということがタイトルに現れているが、ビビアンとは父親が少年時代に観て強烈なインパクトを受けたアメリカ映画『風と共に去りぬ』のヴイヴィアン・リーの美しさに魅了されたことからきている。だから今の店の名前は『ビビアン』なのだ。
ヴィヴィアン・リーの主演したアメリカ映画『風とともに去りぬ』は39年の製作、波乱万丈のメロドラマだが、戦後混乱の日本での公開には、その壮大な物語りと当時としては華麗な表現、もちろんオール・カラーで一つの時代を築いた歴史的な、僕たちにとっても懐かしい青春時代を象徴する映画であったのだ。