演目/ポストマンたちの永い夜

観劇日時/10.2.20.
劇団名/座・れら
公演回数/第2回公演
作/札幌清田高校演劇部・泉慈恵・加藤裕明
脚本・演出/戸塚直人 舞台美術/高田久男 照明/青木美由紀 音響効果/佐々木雅康 衣裳/木村和美 演出助手/大内絵美子 小道具/益永真奈未・青野沙弓 
舞台監督・音楽/寺沢英幸 舞台監督助手/鷲頭環 制作/鈴木喜三夫・青木通子 撮影/高橋克己
劇場名/札幌・新札幌・サンピアザ劇場

父親と娘の物語

 
クリスマス・イヴの夜。郵政民営化を迎えたある特定郵便局勤務の独身女性・千春(=西島瑛子)のアパートに集まった先輩・日下(=杉本明美)や後輩・岡本(=吉田奈穂子)の女性たちと局長(=澤口謙)たちのささやかなクリスマス・パーティの夜。そこへ向いの部屋の住人の鍵っ子の女の子・夏子(=藤田亜里沙)が鍵を見失って転がり込む。
民営化の話題よりも話はいつの間にか、父親と娘の関係悪化の話にずれ込んでいく。
そうなのだ。局長の娘たちも、もう父親よりも仲間内の方が近しくなっていて、局長もせっかく娘たちのために買ったケーキの箱を、娘たちが留守と知ってここへ持ち込んでいる始末だ。
千春の父も不器用で、始めて千春が家を離れるときも強く反対してそれから音信を絶っている。それでも暮れになると千春が大好きだったカルピスの詰め合わせを小包で送ってくるがもう三個も溜まったのに千春は手もつけていない。
夏子が名前の由来を聞かれて、家を出て青森に居るらしい父親が「ビールの美味い夏が好きだから」と言ったことを信じて父親を恨んでいたが、後で「父と母が始めて会ったのが夏であって、その結果、夏子が産まれた」ということを知って、急に別れた父親がいとおしくなり、今日もクリスマスカードを書こうとしていたと話す。
やがて一人一人帰って行き、千春は夏子のために夏の飲み物である積んであったカルピスを開いて出そうとすると夏子の母親(=榎本玲子)も帰宅し、夏子はいそいそと母親の所に帰って行く。
一人残った千春は飲み損なった夏子のカルピスを飲もうとしてフト包装紙にまぎれた一通の手紙を見つける。読んで見るとただ「風邪は引いていないか」という一行だけ……
慌てて積みっ放しになっていたカルピスの箱を開くと、それらの中にはそれぞれただ一行の何と言うことのない父の言葉が書き記されていた。
このように、全編が不器用な父親と大人に成りつつある娘たちの微妙な関係の、いわゆるハートウオーミングな人情劇であって、それはそれで暖かい後味だったのだが、肝心のポストマンたちの郵政民営化に関する想いは殆どなかった。
その他、父の小包を配達してきた郵便配達人(=仲鉢勇一)アパートの大家さん(=竹江維子)の出演。