演目/アプローズ

観劇日時/10.2.17.
劇団名/ピュアーマリー
公演形態/旭川市民劇場2月例会
翻訳/保坂磨理子 訳詩/岩谷時子 演出/浜畑賢吉 振付/藤林美沙 舞台監督/深見信生
音楽監督/前田憲男 照明/塚本悟 音響/寿岡隆徳
劇場名/旭川市民文化会館

舞台裏の暗闘

 
アプローズとは喝采という意味だ。この物語は人々の喝采を受けることを命の糧としている人たちの話である。具体的には女優さんたちのバックステージストーリィだが、人は誰でも他人から喝采を受けようとするのはごく自然な在りようであろう。
 基本的には喝采を受けることが精神的な歓びであっても、それには段階的には金銭が着いてくるのが成り行きだから、必然的に裏の事情が絡んでくる。これはブロードウエイミユージカル『イヴの総て』の日本語版である。
 人気女優・マーゴ(=前田美波里)は、恋人の俳優・ビル(=石原慎一)や敏腕プロデューサー・ハワード(=倉石功)、有能な結髪師・ドウェイン(=佐野瑞樹)、親友の俳優・カレン(=平田朝音)、その夫で脚本家・バズ(=越知則英)などに囲まれて優雅な日々である。
 そこへ純朴な若い女性・イヴ(=飯野めぐみ)が名声を慕って訪ねて来る。彼女は付き人のような位置に居着くが、密かにデビューの機会を狙っているらしい。
 それを知ったバズ、カレン、ハワードたちは一計を案じ、マーゴを陥れて舞台に穴を空けさせ、イヴを代役で送り込む。 
 そこには盛りを過ぎつつあるマーゴと、野心的に成り上がろうとする若いイヴの交代劇が、周りの人たちの金と男女関係の駆け引きで描写される。
 これらの出来事は、たまたまショウビジネスを舞台にしているが、現実にはあらゆる世界で日常的に起こっていることなのであろう。別の世界の話ではないとも思わせるドロドロの展開なのだ。
 そのほか踊るジプシー達として若い男女がオーデションを受けて多数出演するが、この人達も次代のイヴなのであろうか? なかなか力の入った群舞を見せる。そのジプシーの花としてボニー(=紫城るい)が出演する。
前田美波里は、ガラッ八的庶民性が持ち味なのだがいささか下品な趣が大女優の雰囲気を邪魔する。これは人によって好悪の差があるだろう。
イヴの飯野めぐみは前半、清楚な純朴さを魅せて後半、男たちを手玉に取る様子が堂に入っている。
 ラストでマーゴはビルの胸の内へと帰って来るのが救いなのだろうが、観客に迎合して軟化してしまったような気がする。だがこれが年齢を重ねる一つのあり方でもあるのだろうか。