演目/光る河

観劇日時/10.1.6.
劇団名/演劇ユニットてがみ座
公演回数/第二回公演
脚本/長田育恵 演出/射延憲児 舞台監督/杣谷昌洋 美術/杉山至+鴉屋・坂本遼 
照明/千田実 照明操作/渡邉須美恵 音響/余田崇徳  演出助手/成生淑恵 衣装/吉田健太郎 その他大勢
制作/MAICO・坂田厚子・笠井美春 協力多数
劇場名/下北沢・「劇」小劇場

物語性の強い舞台劇

 
都会のビル群とその傍を生活の汚濁を飲み込んで流れる河。このビルの中のマンションに住む若い人妻(=村井美樹)は、深夜豪雨の中、急病の我が子を入院させてとって返すとき、道路に倒れていた人にぶつかって死なせた衝撃にパニックを起こして我が家で泣き崩れていた。
 TV局の経理部に勤める夫(=大場泰正)は疲れて帰宅し、その妻の困窮を見て即刻110番しようとする。妻は、娘の母親を殺人犯にしたくないといい、あくまでも隠蔽することを主張する。
 夫は、逃げ通すことは不可能だと主張する。同じ方向を見ているはずなのに同じ行動をとれない二人……元々、夫は妻の姉と恋人同士だったのを妹が奪ったという過去があったらしい。
 このきっかけを巡って、夫の勤務するTV局のクルー(=田村元・尾崎宇内・石井統・由香里)、妻のボランテイァ仲間(=高宮尚貴・樋口史緒里)、そして被害者らしきホームレスの同居者(=奈良谷優季)、警官(=大石丈太郎)、区役所の福祉課職員(=武谷公雄)らが絡んで二転三転、サスペンス調の物語が展開する。
 若夫婦の危機。かつて名のある詩人だった過去のある被害者とその同居の初老で生活力たくましいホームレス女性、彼女には知能障害の14歳の娘がいる。その5歳ほどしか知能のない娘と福祉課職員との不思議な関係。
 さらにマスコミの論理、ボランテイァの限界、などなど様々な問題の提起を繰り広げて一見、面白そうだ。
 だが最大の問題はこの若妻の常軌を逸した精神構造だ。美人で思慮深そうなインテリ女性が、しかも夫の条理を尽くした説得に逆にどんどん離れていくかと思うと、小さなきっかけで急に明るくなると思うと、また一転、仲間を使って証拠隠滅を画策する。
 人間の心理なんてそんなものよ、と言うのかも知れないが余りにもリアリティが感じられなさ過ぎる。
 次に舞台装置が、背景に抽象的なビル群、近景に河畔をリアルに設定したが、その河畔がマンションの一室になったり、マンションの前庭になったり、もちろん河畔のビニールハウスになったりするのが、とても不自然であり、しかもタッパの低い舞台だから、背景に対して人物が異様に大きく見える。
 僕の好きな物語主義の芝居だが、その中心人物の妻がしっくり来ない不満が残る。いささか残念な今年幕開けの芝居であった。