演目/永劫の館 〜アンニュイ・ウロボロス〜

観劇日時/09.12.4.―6.
劇団名/Theater・ラグ・203
公演回数/第28回公演
作・演出/村松幹男 照明/佐藤律子 音楽/今井大蛇丸
音響/高橋和希 宣伝美術/久保田さゆり
受付・会場/久保田さゆり・乙川千夏・長崎睦子
制作/たなかたまえ・平井伸之・福村まり・鈴木亮介
田村一樹・Theater・ラグ・203
劇場名/札幌・豊平区・澄川・ラグリグラ劇場

現実離れした永劫はアンニュイなだけ

 
「永劫」であり「ウロボロス」なのに、それが「アンニュイ」であることの虚無。
「ウロボロス」とは、自らの尾を飲み込んで円を形作る蛇か竜のことであり、完全・永遠・不滅の象徴であるらしい。
永劫の館を守るのは女主人(=田中玲枝)、たった一人でこの館に代々使えるのが三代目の召使(=柳川友希)。ここのガードマンだったが暇なので昆虫観察に精を出し、昆虫博士になった男(=村松幹男)、だが彼は学者としてのステータスが欲しいわけじゃない。あくまでも昆虫に強い関心があるだけだ。そしてその助手(=湯沢美寿々)、彼らは少年のように嬉々としてただ美しい昆虫を追い駆けるだけだ。
ひたすら美を蓄積する館の女主人のコレクションに憧れるお嬢様(=吉田志帆)と、その乳母であった婆や(=斉藤わこ)の二人は、美と認めない存在は抹殺されるという言い伝えを信じながらも、おそるおそるこの館を訪ねる。
召使の弟(=柳川友希)は、その妹(=瀬戸睦代)との近親相姦という背徳ながらその純愛を美と認めた女主人により蝋人形の美術品として永遠に保存されている。だが実はこの二人はお嬢様たちが訪ねてきたのを切っ掛けに生き返り、現実は互いにそっぽを向き、弟は婆やを妹は昆虫博士を追い駆けまわすという沙汰。
全ての美を永遠に閉じ込めようとした夢は、一皮めくって白日の下に曝せば、全部が生々しい生き物であったということか? 絶望したお嬢様は館に火を放って現実の世界に戻る。
おどろおどろしい設定に現実離れした人物たち……永遠を憧れながら、所詮それは倦怠でしかないというアイロニー。
昆虫採集の男と、その助手の子ども染みた大騒ぎも浮き上がったアンニュイな現象なのであろうか?