演目/声嗄れカラス

観劇日時/09.11.28.
劇団名/エビバイバイ
上演回数/第5回アトリエ公演
脚本・演出/斉藤麻衣子 
制作/高城由香里
協力/今渕陽枝・遠藤有紀・小森望美・関野理恵・村山彩記・吉田奈穂子
劇場名/札幌・中央区市民活動スペース「アウ・クル」301号室

ストレス爆発のエネルギー

 
廃校になった都心の小学校の一室が今日の劇場である。だから劇場としての設備は全くない。ただガランとした狭い空間があるだけだ。
ところが最近このような空間を使っておもしろい表現が出てきた。たぶんこの「エビバイナイ」もその有力な一つであろう。
ある雑居ビルで働く3人の清掃婦の話である。自己肯定というか自惚れの強い中年女(=細木美穂)、天然ボケの新婚妻(=南あいこ)、そしてインテリ風の女(=斉藤麻衣子)……この三人が織りなす騒動である、といっても具体的な騒動が持ち上がるわけではない。日常の作業の中で偶然に開かれた一人の女のストレスの爆発の顛末である。
「あら突然に?」という感じで、天然ボケ女の爆発が勃発する。それはまさに見事に勃発するのだが、それはまた逆に見事なリアリティがある。彼女は全身全霊で想いを爆発させ、同僚の二人は手をつけられない。
会場いっぱいにゴミが散乱する。観客もその壮大さにおそらく溜飲を下げたのではないだろうか。「ヨシ良いぞ、もっとやれもっとやれ!」これこそ観客参加演劇の一つの表現だ。常識をぶっ飛ばすこの劇団の真骨頂である。
声嗄れカラスってなんだろう? カラスってもともと声が汚いというか嗄れているというイメージが強い。そのカラスの声が嗄れているというのは、絶望的なイメージが喚起されるのだ。この女の暴発は、人間の最後の嗄れ声なのか?
有線放送のディスクジョッキーの役で高木由香里が声のみの出演。