演目/蟹と無言歌

観劇日時/09.11.26.
劇団名/TPS+劇団・青羽 提携公演
脚本/斎藤歩 演出/キム・カンボ
照明プラン/熊倉英記 照明オペレーター/矢口友理
音響/百瀬俊介 舞台監督/尾崎要 演出助手/宮田圭子
翻訳・通訳/木村典子
TPSスタッフ/鎌内聡・齋藤由衣 宣伝美術/若林瑞紗
制作/阿部雅子・横山勝俊 ディレクター/斎藤歩
プロデューサー/平田修二・木村典子
企画・制作/北海道演劇財団
写真提供/高橋克己・尾崎康之・ゆんフリー写真素材集
劇場名/札幌中央区・シアターZOO

日韓友好演劇

 
札幌の劇団『TPS』と韓国ソウルの劇団『青羽(チョンウ)』の合同公演である。TPSの斎藤歩が戯曲を書き、青羽のキム・カンボが演出、TPSの俳優が5人、青羽の俳優2人が出演する。
札幌・すすきのの繁華街に近い安アパートへ一人の若い韓国女性(=キム・エリ)が新しく入って来る。女経営者(=
宮田圭子)は気さくなオバチャンだ。片言の日本語の韓国女性を大歓迎で、隣接する自分が経営する安中華料理店で最初の夕食をご馳走することにする。
この食堂には日本語のほとんど話せない若い韓国人男性(=イ・ホンジェ)がバイトで働いている。彼は大人しいが誠実で働き者で仕事熱心な男だ。
そしてもう一人ここで働く若い男(=岡本朋謙)がいる。彼も気のいい奴だが、新しいバイトが来たのは、自分が安い賃金のバイトと入れ替えられるのじゃないかと疑心暗鬼だ。だからといって新人に意地悪するわけじゃない。それどころか誠心誠意で彼に仕事を教えている。
今夜も仕事にあぶれた彼の恋人(=高子未来)が来ている。彼女はすすきのの夜の女性だが、このところの不景気でその日によって出勤待機になるのだ。
このアパートには変な若い男(=木村洋次)が居る。その日暮らしで様々な仕事をしながら妙にハイテンションな男なのだが相手にしなければ無害だ。この男、舌足らずな韓国語を喋るが、抜け目なく新入りの韓国女性に言い寄る。
このように、登場人物がみんな若くて貧乏で何とか最低に近い生活の毎日であるが基本的には善人である。生活が苦しいのはソウルも同じらしい。むしろ少しでもいいところを目指して札幌へ来たのだが、それほどでもない。
活蟹の宅配便がこの食堂に届けられる。ちょうど韓国人バイトしか居なかったので、彼はよく分らず受け取り蓋を開けて仰天する。
蟹の入った発砲スチロールの蓋を開けたまま出前に出たところへ配達先を間違えた配達人(=佐藤健一)が慌てて取り返しに来る。だが箱には既に蟹は居なかった……
という騒動を巡って7人のてんやわんやと友情物語が繰り広げられる。確かに面白いし蟹に纏わる話は興味深い。だがこれは何だろう? 韓国も日本も違いはあっても同じだよということかもしれないし、分かり合えるはずだというキャンペーンともみえるし、結局日韓友好物語以上ではないような気がする。
若者の貧乏物語にもう少し切り込めば違う展開になったかもしれないが、初めての試みだからまずはこれが出発点なのだろうと思っても、やはり物足りなさを感じるのだ。