演目/ホテルもみじ山別館

観劇日時/09.11.8.
劇団名/北見 動物園
作/鈴江俊郎 演出/松本大悟 音響/岡利昭
照明/十和田純栄・山口香織 制作/佐藤菜美・岡歌織
制作補/菅原祐太朗
劇場名/札幌・琴似・パトス

道ならぬ恋に突き進む滑稽な悲劇的存在

 
山奥の大きなリゾートホテルに宿泊しているわけありそうな中年のカップル。実は男は高校の国語の教師(45歳=中村聡)であり女はその担任の生徒の母親(40歳=岡歌織)なのだ。始めは女がずいぶん若く見えたので生徒かと思ったほどだが、つまりW不倫である。
 もう一組のカップルは、定時制高校の物理の女性教師(40歳=佐藤菜美)とその教え子のダンプ運転手(35歳=廣部公敏)である生徒だ。こちらはともに独身である。
二組は共に異常恋愛であろう、4人とも隠した恋のため、わざわざ遠く離れたこのホテルに偶然来たのだ。二組は303号室と403号室という上下にある別の部屋の設定で、交互に表れるがそのシチュエーションが被っていて面白い。例えば大きな鳥が飛んでいるという場面があると次の別のカップルのシーンではその鳥が飛んでいるというところから始まるという風にである。それで同じホテルだと分る。
しかし途中で、これは同じ学校の教員同士だからきっとどこかで鉢合わせをするのじゃないかと思って観ていたら案の定、先生同士が外で出会ってしまう。
それからの4人は体裁を繕うためにてんやわんやの大騒動に陥る。意を決した国語の教師と母親は物理の先生たちの部屋を訪ねる。
そこでも本質を隠したがる教師たちに母親が切れる。つまり開き直る。人を愛することに素直でありたいという本心だが、実際にはそんなに巧くいくものか、一種の自棄のような投げ出し方だ。しかし人を愛するということの本質はおそらく、そのような切ないものなのだろう……
密室でのたった4人それも2対2の動きの少ない心理劇だが、劇場自体も150キャパほどの小劇場だから、ほんとにささやくような台詞もリアリティがあり、微かな動きも丁寧に造形されていて、恋に悩む彼らの心境が深く静かに伝わってくるような1時間40分であった。