演目/星空発電所

観劇日時/09.11.7.
劇団名/intro
作/橋口幸絵 脚色・演出/イトウワカナ
舞台監督・美術製作/高橋詳幸 舞台美術/高村由紀子
照明/秋野良太 音響/橋本一生 衣裳/中原奈緒美
女子マネージャー/富樫佐知子
劇場名/札幌・琴似・コンカリーニョ

届かぬ熱い想い

 
銀河交流電鉄で地球から1時間の小惑星にある星空発電所。新しい星を作り出すこの工場の燃料は人々の熱い想い、具体的には「届かなかった手紙」である。
 リストラされた冴えない中年男(=宮沢りえ蔵)は、二人暮らしの娘に励まされ、娘の将来のためにも、この発電所に何とか就職したい。
 またこの工場には想いの届かなかった人たちの亡霊が屯して永遠の憧れを求めてさまよっている。そこで働きだした男だが、人々の篤い想いだけをエネルギーにすることに疑問を抱く。そしてついには自ら一等星になるべくエネルギー転換用の溶鉱炉に飛び込む。
 こういう未来型フアンタージはワカナ・ワールドにぴったりなのか、あるいは強引にワカナの世界に引き込んだのか、脚の長い椅子を5脚、斜めに空中に浮かしてその座席に星を乗っけて照明を当てるといういかにもワカナ演出らしい舞台装飾を組み立てて一つの状況を作ってはいたが、肝心の「人たちの想いのエネルギー」に対する強さが感じられない。
 三人の亡霊たちも、想いのエネルギーの必死さが伝わらず形だけ演じているような感じがする。イトウワカナ演出はそもそもワカナ個人の想い入れのみが強く、自己満足の感傷が出やすい。今回もその傾向が強く出ている。
 それと父親と娘との交流が淡すぎて、せっかく味のある男を出したのにその関係が弱くて印象が薄いのが残念だった。
 ワカナ・ワールドの特異性は存分に表現されたのだが、観客に訴える力は弱いと言わざるを得ないのだ。
 その他の出演は、田中佐保子・佐藤剛・菜摘あかね・
大高一郎・奈良有希子・のしろゆう子・ワタナベヨヲコ。