演目/コバルトにいさん

観劇日時/09.10.22.
劇団名/イナダ組
作・演出/イナダ 
劇場名/札幌・西区・琴似・コンカリーニョ

エンターティンメントの傑作

 
この芝居、おそらく3演目だと思う。そしてその都度、微妙に変化・進化している。調べたら脚本はほとんど変えていないようだ。それにも関わらず微妙な進化が認められるのは何故だろうと思われる。
この芝居もサスペンス味が強いから、ストーリィは語らないことにするが、一人の男・コバルト(=納谷真大)の挫折から始まったユニークな強い生き方を描いたものだと思う。
今日観ていて気が付いたのだが、是枝裕和監督の09年制作『空気人形』という映画がある。これは寂しい独身男が愛した空気入りの女性人形が心を持ってしまい、別の男性と恋をする話(原作・「ゴーダ哲学堂 空気人形」 業田良家・作)なのだが、コバルトを物体としか交流できない寂しい男とみるなら、心を持った物体と人間との交流という逆現象にも一種の共通点が感じられる。
だがこのコバルトにはもっと積極性が感じられる。開き直った強さが感じられるのだ。
孤独に生きざるを得ない現代人の哀切な象徴として、心を持たない人形に託する切ない物語なのであった。