演目/わが町

観劇日時/09.10.11.
劇団名/演劇集合体マキニュウム
作/ソートン・ワイルダー
演出/槇文彦 音響効果/中井孝太郎 照明/長流3平 舞台/鈴木健太郎・峰田はるか 舞台監督/瀬川圭介
衣装・小道具/村瀬有香・石橋玲・坂口益海・高橋絵里奈 岩佐麻由・堀江倫子・能戸麻紀 
制作/金子綾香
劇場名/札幌・西区・琴似・レッドベリー・スタジオ

コンパクトに纏めたワイルダーの世界

 
世界的な古典戯曲、それも登場人物25名以上という大作を、たった5人の俳優とレッドベリィという極端に狭い空間で演じようとしたマキニュウムの暴挙にひたすら感嘆する。そこにはどういう勝算が計算されていたのだろうか?
 第1部は、アメリカ北東部の小さな寒村、時代は20世紀初頭、産業革命がじわりとアメリカにも浸透して来つつあった頃……
 その何もない平凡な田舎町で、静かにゆったりと暮らす素朴な人たちの日常を暖かく克明に描く。
 2部は、その町の中の隣同士の若い男女の恋と結婚の課程を描く。愛し合いながら微妙に食い違い、それを越え行く二人の愛情、農場を経営する夢を語る男……
 そして3部は、町を見下ろす高台の墓地……そこには、かつてその町で生きていた人々が静かに眠っていた。
 新妻の彼女は、産後の肥立ちが悪く、誕生直後の嬰児を残して死にきれない死を迎えた葬式の日だ。
 彼女は現世と家族に大きな未練がある。だが死も逃れられない現実だ。遠い昔の記憶に戻ってみる、しかしそれははかない夢だけだ……永遠に続く生きる営みの懐かしさと哀しさのリンク……
 こういう物語を5人(=瀬川圭介・金子綾香・村瀬有香・槇文彦・石橋玲)で入れ替わり立ち替わって演じる、だから女性を男優が演じ、男性を女優が演じることもあるし時には舞台上で突然に役柄が変化したりすることさえある。
その不自然さはほとんど感じられないのだが、一番気になったのは、あまりにもナチユラルすぎて逆に現実離れした幻想のようにさえ見えてしまうことだ。
 芝居とは所詮、嘘で固めた幻想だ。それをどう料理して現実と錯覚させるかが勝負だ。この舞台は初めから嘘を前提としているから訴えかけが弱いのだ。
特に槇文彦が台詞をかむ回数が多いのが白ける。彼は仕事が多すぎて疲れているのじゃないのか、などと疑ってみる。もっと地に着いた堂々とした仕事をして欲しい。
だが、もともとこの戯曲は一切の装飾を省いて、空舞台で舞台監督が状況を説明し、最小限の道具を舞台監督や役者が自ら設置して進めるという指定があるのだ。そこを巧く使って一つの世界を創りあげたのは見事であった。