演目/ツギ・ハギ・チョウチョ

観劇日時/09.10.11.
劇団名/ザ・ビエル座
脚本・演出/雨夜秀興 照明/上村範康・松本紀子
音響/梶野泰範・斉藤香織 制作/藤田圭一 イラスト/雨夜秀興 デジタル部/あべまさこ
協力/ミュージックファン
劇場名/札幌・中央区・シアターZOO

自分の人生、個的な生き方

 若い男・ジュン(=雨夜秀興)が、恋人・キョウコ(=木村愛里)の両親(=ツキコ/箕輪直人・リョウジ/古崎瑛美)の所へ結婚の許しを受けに来ている。貧乏ったらしい狭い和室にちゃぶ台という粗末な部屋だ。
 和服の父親が古崎瑛美で、派手に化粧した母親が箕輪直人だ。初めはわざと逆にした配役で受け狙いかなと思って、この昭和時代を象徴させたようなアナクロの典型劇らしいものを観ていた。
 頑固親父に翻弄され、若い二人は結婚の許しを受ける申し出に何度か失敗してようやく再会の約束を取り付ける。その様子を笑劇的にみせる。だがやがて本筋はこの話ではなかったことが分る。
 母親(=箕輪直人)は中年オカマで、父親(=古崎瑛美)はこれまた中年オナベなのであった。しかも父親役のオナベは、母親のオカマの理解者であり、家族代理人請負業者の社長であり、若い恋人はその社員二人の偽恋人であった。
 中年オカマが普通の中年母親の幸せ家族を、シミュレーションで味わいたいという願望を、この代理業者が請け負ったのだ。
 やがて父親役と母である孤独なオカマとの出会いが回想され、優秀な両親と兄との家族の中で出来の悪い若い男ジュンは、この欺瞞家族の偽善に耐えられなくなって切れる。
 一方、キョウコは孤児であり、不幸な生い立ちだけど生活力は強い。だが優しいツキコに出会って本当の母親を感じる。ツキコは激しい言葉でジュンを励まし、四者四様の付き合い方と了解が成り立つ。
 それから何ヶ月か後、ツキコとの一緒の生活を定めた中年オナベが訪れたツキコの家へ、それぞれの生き方を定めて婚約した若い二人が、その報告に来る。
 状況がどんどん変化する面白さは演劇的である。物語そのものは単純だが、その展開に多少の不自然さ、たとえば仕事中に個人の感情を爆発させるなどの無理な成り行きを乗り越えて引き付けるエンターテインメントとしての大きな魅力があった。