演 目
Room……
観劇日時/09.9.26.
劇団名/灯座・平成商品 合同公演
音響オペレーション/三浦一歩
照明オペレーション/横内リョースケ・那須野健太
制作/びす子・三浦たまみ・後藤祐也・八重樫知宏・ナカマサ・篠田浩子
振付/植松尚樹
劇場名/BLOCH

 二つの劇団が、一つの劇場で、同じ日に、同じ装置、同じスタッフ、そして同じ役者を使って、別々の芝居を上演するという企画を試演した。
『仄』と『あなたと君とあなたの愛とアレ』の2本であるが、ZOOが6月に行った演劇祭と同じような企画だ。
同じ舞台装置を使ってどれだけ違う舞台が出来るのか興味があったが、それぞれが似たような雰囲気になってしまった。条件の悪さに、いささか同情する。

●演目1  仄 
作・演出 植松尚樹

性的暴力被害女性の恐怖

 幸せな婚約中の女性・かほり(=きむらゆうか)は、婚約者(=後藤克樹)や、優しい弟(=山本将斗)、その友人(=植松尚規)、そして本人の親友(=飛世早哉香)たちの心配りの中で暮らしながら、なぜか苛立ち何かを恐れてその度に自己嫌悪に陥り「ごめんね、ごめんね」と謝っている。
 弟はその理由を知っているが優しさのために婚約者に話が出来ない。本人も自分で話すというが踏ん切りがつかない。
 とうとう彼女は決心して婚約者に1年前、強面だが優しい男(=滝川竜司)と同棲したが、監禁されて暴力と性的虐待を受けていたことを告白する。
 この場面は壮絶である。視覚的には婚約者の見守る同じ舞台面でその悲劇が演じられる。
 心配した弟たちが無事に救出して一件落着し、一見幸せな日常が戻ったように見えた。
 そのとき、ベランダからかつての加害者が突然進入する。その前に伏線があったので、きっと男が出るぞと思っていたのだが、それでも観ていてギクッとする迫真力があった。
 そこでカットアウトとなり、悲劇は再開されたのか、無事収まったのか幕は降りる。
 全員が「ビジュアルアーツ」の出身で、最初は淡々と静かに5人の関係が描かれ、少々退屈かな、でも繊細な関係性がよく描写されているので観ていると、かつての男が現れ修羅場に一転して、不気味な場面となる。
 表現力はなかなか力があるのだが、話の内容は「だから、どうなの?」という域を出ないのは残念、このかつての二人の関係を深く掘り下げたら、意義の深い物語が出来たであろうと思われる。



●演目2  あなたと君とあなたの愛とアレ 
作・演出 きむらゆうか 

 学生の4人、ケイタ(= 植松尚樹)・ナオヤ(=山本将斗)・アヤ(=きむらゆうか)・カオリ(=飛世早哉香)たちの入り組んだ男女関係、利己主義なその関係が徐々に現れてくる経過をダンスを交えて展開する。
 カオリの同棲者(=滝川竜司)も浮気者であり、そこへ夕べ泊まり込んで裸で寝ていた大阪さん(=後藤克樹)が乱入して騒ぎが拡大する。
 この劇も個性的で豊かな表現力をもって面白く見せるがやはり「だから、どうなの?」という感はま逃れない。
 ビジュアルアーツが、そういう舞台創りなのか、どうかは知らないけれども、このエネルギーの使い方はほんとに惜しいと思われるのだ。