演 目
テインドンガー
観劇日時/09.9.12.
劇団名/FICTION
作・演出/山下澄人 照明/広瀬利勝 音響/長谷川浩一郎
裏演出/井上唯我 舞台監督/FICTION
宣伝美術/西山昭彦 音楽/山下澄人
プロデューサー/白迫久美子
劇場名/シアターZOO

異形な世界の異形な人物たち

 物語はあってないような感じだ。レストランのコック(=竹内裕介)がくれる残飯に依存しているホームレスの男(=山下澄人)の同居の女(=福島恵)が死んだ。彼はどうしていいのか分らない。とりあえず死体を細切れにして山奥へと運んで埋めようとする。
彼には二匹の、たぶん犬がいる。大きな犬(=荻田忠利)と小さな犬(=まさと)だ。この犬たちは彼に従順かと思えば、突然反抗する。犬だから人間の言葉は話せない。唸るだけだ。
この子犬が面白い。おそらく小学3・4年くらいの正真正銘の子役なのだが、素直な演技で全く違和感がない。もっとも犬だから言葉は話さないが、動きが実に自然でリアリティがある。
この二匹の犬とおぼしき動物が、邪険にする彼を頼ってどこまでも着いて行くのがいじらしい。
この主筋に、子どもが出来ない若夫婦(=竹内裕介・小林由梨)の悲劇。妻の悲しみをオドオドすることでしか対応できない情けない夫の話。
売れない役者(=山田一雄)が吃音の同棲の女(=小林由梨)に対する倒錯した暴力による強がりの話。
プロレスラー(=山田一雄)の狂気。
男装なのだがバストが異常に大きい男なのか女なのか判然としない、山下清を思わせて黙々と絵を描くリキ(=大島未由希)と、一輪車を巧みに操る少女(=佐久間麻由)。
この少女も凄い。言語障害者として登場するから何を言っているのかほとんど分らない。しかし軽妙で明るくしたたかだ。それにも増して一輪車の操縦が素晴らしい。この狭い舞台上を縦横無尽に走り回り、ストップし、逆走し、挙句に竿を操って床に散乱した衣裳を片付けたりする。この人もおそらく小学高学年か中学生くらいだ。
つまり出てくる人が皆、マイノリティでしかも異形なのだ。しかしリアリティは抜群でまったく違和感がない。
ラストに近く、子犬と初老のホームレスが、「主の御許へ近づかん……」という賛美歌をデュエットし、さらにその歌声は広がり厚みを増す。これは皮肉でも批判でもなく、無神論でもない。まともで真摯な歌声なのだ。
倒産したレストランのコックは最後に残飯を持ってくる。ホームレスはそれをさらに不幸な者たちにさり気なく渡す。
もしかして山下澄人はクリスチャンか? ま、それはどうでもいいのだが、異形で破滅的に見えるこの展開のこの舞台は、エンターテインメントの要素を色濃く含みながら、弱い人のもっと弱い人への眼差しで終わったのだ。
このラストや全体の構図は、前回(08年9月)の『しんせかい』にも、前々回(07年9月)の『石のうら』にも共通する、とても好ましい「山下澄人ワールド」なのだ。