演 目
美男ペコパンと悪魔
観劇日時/09.9.6.
劇団名/TPS
作/ヴィクトル・ユゴー 構成・演出/斎藤歩
演出助手/宮田圭子 舞台監督/岡本朋謙
舞台スタッフ/TPS劇団員
宣伝美術/若林瑞沙 制作/阿部雅子・横山勝俊
ディレクター/斎藤歩 プロデューサー/平田修二
企画製作/北海道演劇財団
劇場名/札幌芸術の森・調整池(野外)

クレヨン画の寓話劇

 神話的な物語。英雄のペコパン(=岡本朋謙)は、婚約者(=齋藤由衣)を残して諸国の王侯の依頼を受け、様々な冒険をして諸国を巡る。
5年経って戻ってきたら、婚約者は老婆になっていたという浦島太郎の物語。
諸国の人々は木村洋次・佐藤健一・鎌内聡・宮田圭子・林千賀子・高子未来・須貝美佳が、次々と勤めるが、濃い茶色のガウンのような衣裳は変わらない。中で鎌内聡はペコパンが絶望と引き換えに契約をする悪魔に扮する。
全員が同じ衣裳で、まるで小学生が夏休みの宿題に作ったような被り物や小道具で順次変装して行く。
舞台として使ったここは、大水が出たときに一時、その水をここで溜めて、洪水を調節するところである。
三方がコロシアムみたいな高い堤防のような土盛りで囲まれた谷底のような部分をメイン舞台にして、その急坂の土堤を巧く使って、野外らしい場面が展開するのも楽しい。
恋人をほおり放しにして、まるで悪魔に魂を売ったように何十年も忠実に働いて、気が付いたらすっかり老齢に成っていた、という笑えぬ悲劇が、単純明快にしかも滑稽に描かれていて、魅力的である。
そしてそういう創り方が、肩を楽にして観客と一緒に楽しむという、演劇というよりも文字通り「お芝居」という祝祭的な時間と空間とを、作り手と受け手が共有する演劇の原点の形なのであろう。物語自体は祝祭的ではなく、むしろ虚無的ではあったのだが……