演 目
こんにちは、母さん
観劇日時/09.8.29.
劇団名/弦巻楽団
公演回数/間奏曲#1 若手自主企画公演
作/永井愛 演出/弦巻啓太 照明/稲田桂 
音響効果/丹治誉喬 音響操作/前田枝里子
印刷物/石上エリ 制作/弦巻楽団
劇場名/シアターZOO

中高齢者の悩みを表現する若者たち

 本公演とは違う実験性や趣味性の高い企画を「間奏曲」と名づけて、その第一回がこの一定の評価を持つ、永井愛作の『こんにちは、母さん』である。
この戯曲は老齢者の恋愛や、中年男女の家庭や仕事の挫折を扱っているので、20代の出演者にとってはハードルが高い。勉強会としては良いのだろうが、観客にとっては違和感が強いはずなのだが僕は年齢を重視しないことにした。
年齢は人生における一つの過程であるから、年齢のリアリティは度外視して観ると、役者たちの心情が素直に感じられて逆にリアリティを感じることが出来そうな気がする。
だから演技としてのリアリティを表現する役者の心の持ちようが重要になってくる。その点では巧くいっているように思えた。
残念なのは和風の部屋なのに舞台の床をそのままに使っていたことだ。これは薄縁(畳表)を敷くべきであった。このままでは違和感が大き過ぎる。
留学生の世話をするボランテイァグループの事務局長・神崎福江(=石川藍)は、自宅をグループの事務所に使っている。その息子で別に家庭を持ち、大企業の豪腕リストラ担当部長・昭夫(=茅原一岳)は、仕事一途で家庭は崩壊しているらしい。突然二年ぶりに母の所へやって来る。
源氏物語を読む会で受講生の福江と知り合った、講師の元・大学教授の荻生直文(=村上義典)は、連れ合いに先立たれ息子と折り合いが悪い。福江との再婚を望んでいる。
そこへ、昭夫に退職勧告された同僚の木部(=高山龍)が抗議に乗り込んでくる。世話をしている中国人留学生・李燕(=塚本智沙)は自己主張が強くトラブルメーカーだが向学心が強い。
会長の琴子アンデション(=佐藤春陽菜)は夫のスエーデン人が故国に帰ったきりの一人暮らしだ。
隣家の番場小百合(=YOUCO)は副会長であるが、昭夫の幼馴染である。
直文は半ば強引に福江の家に荷物を運び込むが、そこには家庭を逃れた息子の昭夫が既に居付いている。荷物運びを手伝う息子の嫁・康子(=大沼理子)は心優しい女だ。
突然、直文が発作を起こして死ぬ。残った福江は、老後を騒がした直文を恨んだり懐かしんだり複雑な心境だ。
昭夫は密かに木部のその後の生き方を心配して、手配をしていたために逆にリストラされる。
挫折と混乱と崩壊の只中にある中高年者の生き方を模索した物語は、問題を投げ掛けたまま幕を閉じるが、若い役者たちは少なくとも白けさせない舞台を演じたのであった。