演 目
現代狂言
観劇日時/09.8.16.
公演形態/現代狂言滝川実行委員会
企画/南原清隆・野村万之丞 台本/「東京パンダ」野村万蔵・森一弥
   「サードライフ」南原清隆・山下晃彦
演出/「東京パンダ」野村万蔵  「サードライフ」南原清隆
監修/野村万蔵 衣裳/江木良彦・海老沢清美 演出助手/山下晃彦 舞台監督/猪ケ倉大介
企画・制作/萬狂言
劇場名/たきかわ文化センター

●演目1  佐渡狐
 いかにも古典らしい狂言。奏者(取次ぎ役人)を人気タレントの南原清隆が演じたのが、いささか違和感がある。どれだけ修業をつんだのか判らないが、狂言では素人だろう。
 だが、そんな素人でも本気でやればOKというのが現代狂言の面目なのだろうか? 一般の観客には判り易く大受けであったようだ。
佐渡の百姓(=野村万蔵)、越後の百姓(=吉住講)の出演。

●演目2  東京パンダ 
 『佐渡狐』の現代化と称する現代狂言。核心である「賄賂」を受け継いだ物語。東京の政治家(=嶋大輔)と大阪の政治家(=彦麻呂)の、「東京にパンダが居るか居ないか」の話から、東京に「食い倒れ太郎」が居るか居ないかの賭になり、それを首相(=岩井ジョニ男)が裁くのだが、ここで賄賂が事を決する。
 首相の岩井ジョニ男が脱線の連続で、それはそれで面白いのだが、出演者が全員、噴いて(笑って)しまって収拾がつかない。最後に首相が、東京に「食い倒れ太郎」が居る証拠に「食い倒れ太郎」に扮して登場すると大爆笑で、僕も芯から笑ってしまった。
 全編、タレントのお遊びか、その昔の軽演劇みたいになってしまったが、おそらく観客は喜んだと思われる。これも現代に生きる現代狂言のひとつの表現であろうか?

●演目3  サードライフ 
 バーチャルライフに逃げを求めるサラリーマン(=森一弥)の話。彼は自分がどういう生き方をすれば良いのか、バーチャルライフの世界の中に答えを求めに来る。
 その話が核になっているのだが、内容はこれまたタレントの一発芸や、得意芸の集大成みたいになっている。
 その一つ一つは確かに面白くて、僕も笑いが止まらないのだが、そのどこが狂言なのか? と思ってしまう。イヤこれこそが現代に生きる狂言の新しい表現なのだろうか?
 芸達者な一人一人の集積が、新しい現代の狂言を創りつつあるのだろうか? その群衆の一人に、信長を演じる野村万蔵が嬉々としてタレント芸を演じるのが痛わしいと同時に果敢な開拓者精神も感じられて頼もしい。きっと古典尊重の同業者の顰蹙を買っているのだろうなと同情する。
もっと乾いた笑いを期待した僕は、いささか期待はずれの感じもあったが、でもこの実験精神が新しい芸能を創っていくのだろうと肯定的に考えるのだ。いわゆる「お笑い」芸能の大部分を占める薄っぺらさの余り好きでない僕も、確かに大いに楽しんだのは事実だから……
その他の出演者。サルヒコ・案内人=南原清隆、
義経=佐藤弘道、弁慶=ドロンズ石本、業平=平子悟
一休=井川修司、有栖川宮識仁=岩井ジョニ男
サードライフの住人(パントマイム)=大野泰広
音楽・ケチャ 打楽器=和田啓 管楽器=稲葉明徳