演 目
サンタのはし
観劇日時/09.8.15.
劇団名/skc
公演形態/JAPAN TOUR
脚本・演出/すがの公 
スタッフ/記載なし
劇場名/ATTIC

人情喜劇

 パチンコ屋駐車場管理人の老人(=すがの公)の仕事場である管理人小屋を訪ねてきた孫娘(=天野さおり)。彼女は祖父を心配して訪ねて来たようなのだが、何か言い出せない事情もあるらしい。
老人は一徹で頑固者だが変な愛嬌もあって、この二人の掛け合いが漫才風に展開される。そのナンセンスなやり取りが約一時間半に亙って続けられる。
なぜ孫娘が祖父を訪ねてきたのか? 祖父はなぜいつまでも一人暮らしをしているのか? お互いが腹の探り合いでもある。
やがて孫娘はドキュメント映像作家としての仕事を失職したらしいことが分る。実はこの老人も彼女が来たちょうどそのとき、変な正義感を発揮して社長の怒りを買い失職したばかりである。
そしてラストは、老人が頼んだ出前の「かしわ蕎麦」を一緒に食べるシーン。老人は箸をまるで凶器のように逆手に持って食べるし、孫娘は逆に握り箸で食べ、お互い食べ難そうだが、それぞれの不器用な生き方の流儀を表わしているような場面である。
この芝居は、06年『サンタのうた』で情けない若い父親としっかり者の娘の対話、そして07年『サンタのひげ』では夢想家で浮かばれない兄と帰宅を勧める妹との話という第1作『サンタのうた』のヴァリエーションであった。
『サンタのうた』は、わりと意外性の少ない単純な話であったような気がするが、次の『サンタのひげ』ではかなり屈折した心境が魅力的で、たとえば「寅さん」と「さくら」や、『冬のバイエル』のやくざな兄とピアノ教師の妹のような関係が面白かった。
今度の『サンタのはし』はもっと大きく、孫までもが屈折している。そしてラストの「箸」のオチ。まるで落語であり人情噺のようなコクがある。
すがの公は、こういう話が性に合っているのか快調であるが、わずか一坪強の狭い舞台と、孫役をトリプル・キャストにしてワゴン車で全国巡演という暴挙をやっている。
今回は全国22都市を回る計画でこの拘りとストイックさには脱帽する。
残念なのは、途中の展開が少し長すぎて少々退屈する部分があることであろうか。今後の成長を期待したい。