演 目
しんじゃうおへや
観劇日時/09.7.19.
劇団名/yhs
公演回数/22th
脚本・演出/南参 舞台監督/有田桐 照明/相馬寛之
音楽/川西敦子 音響/橋本一生 舞台美術/南参・丹治誉喬・能登英輔・吉竹歩
小道具/青木玖瑠子・福地美乃・三宅亜矢 衣裳・メーク/水上佳奈・小助川小助・十日市恵子
制作/大塚黒・水戸もえみ 制作補助/小森望美
宣伝美術/水戸もえみ
WEB/イシハラノリアキ・小林エレキ
Yhsプロデューサー/亀山統
劇場名/シアターZOO

一捻りした硬派の社会劇

 ちょっと分り難いが、舞台は死刑執行室である。「きたえるおへや」という第一話は、刑務官たちが死刑囚に扮した新人刑務官を連れてきて様々なシミュレーションを行い、死刑執行の練習をするという話である。
そんなことが実際に行われるかどうかはともかく、そこで話される刑務官たちの会話は、リアリティがあるだけではなく、職務とはいえ一つの命を絶つことに関わる恐怖とプレッシャーから始り、死刑の是非までも議論される。
そして、その会話は中味の真面目さとは逆に、一種の滑稽さのテイストを持つ。人を殺すという不条理が齎す非現実的な滑稽さであろうか? 粛然とする思いだ。
そして第二話「こいするおへや」は、ラブレターで呼び出された男子刑務官(=小林テルヲ)は、相手が同僚の女子刑務官(=福地美乃)であったことに驚く。お互いの誤解が誤解を重ね、こんがらかっていく過程が笑劇風に展開する。
特殊な任務を担った刑務官も普通の人間だという謂いなのか。
第三話「あかないおへや」。ハンギングされた死刑囚が、ぶら下ってくる執行室の下の部屋。
電気系統の不具合による点検修理のために、電気工(=野村大)とその助手の女性がこの部屋へ来る。
普通、外部の人間が単独でこのようなところへ来るとは考え難いが、それがちっとも不自然に見えない。極限の恐怖が、人ごとのようには思えない現実味がある。
ラスト「たずねるおへや」。は、死刑囚(=小林エレキ)の悔恨の思いか?
自分が何処に居るのか分らなくなる、一種の精神脅迫観念病みたいな状態だ。そこへ知らない女性(=ハタノユリエ)がくる。彼にとっては自分の部屋に無断侵入して来る女性だが、その女性は逆に自分の部屋へ男が不法侵入したと訴える。男は自信がなくなる。無言の女性がまた2人、出て男を脅かす。
男は混乱する。女性たちは、おそらくこの男が殺めた女たちの亡霊らしい。精神の安定が極端に外れた男は恐怖と狂気の中にのた打つ。この場面の小林エレキは壮絶であり演技を超えた鬼気迫るものがある。
死刑囚の話としては、シアター・ラグの『腐食』があるが、実にこれと好一対をなす舞台だと思う。
4つの話のバランスといい迫真的な演技といい、yhsとしては『95』以来の社会派とエンターティンメントの融合した秀作であった。
その他の出演者。能登英輔・イシハラノリアキ・丹治誉喬・吉竹歩・三宅亜矢・青木玖瑠子・十日市恵子・