演 目
瀕死の王さま
観劇日時/09.7.11.
劇団名/TPS小文字(tps)シリーズ
作/ウジェーヌ・イヨネスコ 翻訳/大久保輝臣
演出/斎藤歩 演出助手/林千賀子 舞台監督/鎌内聡
舞台監督助手/齋藤由衣 舞台スタッフ/TPS劇団員
宣伝美術/若林瑞沙 ディレクター/斎藤歩
プロデューサー/平田修二  制作/TPS
劇場名/シアターZOO

生きることの焦慮

 生きている全ての命は、「死」という現実から免れることは不可能だ。最高権力者である王(=斎藤歩)だって例外ではない。
 しかしこの王は、治国に失敗した悪王であるにも関わらず、執拗に権力と生命にしがみつく。
 その醜態はまるで現代史の直接的な象徴であり比喩ともなって苦笑が漏れるが、現代史と言うよりは人類の愚かな歴史の集大成と言えるのかもしれない。
そういう意味ではこれは単に王だけの話ではなく、すべての命ある人々のあからさまな例え話であろう。
特に面白かったのは、正王妃・マルグリット(=清水友陽)と医者(=岡本朋謙)の冷静で冷酷な存在と、王妃・マリー(=宮田圭子)と女官・ジュリエット(=高子未来)の暖かい愚鈍さとの対比であろうか。
そして衛兵(=佐藤健一)は、どっちつかずの曖昧さにリアリティがあったりして判り易い物語であり、何だか寓話劇をみているような気がする。
この舞台も『椅子』と同じように、木村洋次・稲垣佳澄・齋藤由衣・鎌内聡の4人がダブル・キャストで4チームを作り9ステージを上演するという日程である。
全部を観たい気持ちは強いが物理的に無理であり、せめて対照的な2チームは観ると何か違うものが見えたかもしれないかなとも思ったが、『椅子』は対照的な2チームを観たからそこから類推するだけであるか……