演 目
Door ―ドア―
観劇日時/09.7.5.
上演団体名/深川西高校4組連合
劇場名/深川西高校・体育館

閉じこもった青春の心

 高校生・冬真(=太田侑輝)は、「自立心を養え」という両親(=前田拓哉・吉田友香)の方針で、一人暮らしをさせられている。だが彼は両親に期待されている妹・夢芽(=本間千晴)の存在によって疎外されたように感じている。
冬真は、友人の薫(=中村敦洋)の協力で人口知能を持つアンドロイドのアリス(=万代美月)を完成させる。だが冬真は、その大事な友人・薫さえも遠ざけて一人暮らしの部屋に引き篭もる。もちろん心配する両親や妹の夢芽をも遠ざけて一人、閉じこもるのだ。
妹・夢芽は一見良い子だが、実は要領よく泳いでいるだけで、友人・桃華(=川井里保)と遊び呆けている。
冬真は、唯一の拠りどころであり自分の分身でもあるアリスからさえ批判され、孤立し自分を失っていく。
ラストに近く、両親と妹の家族団欒の場面にアリスを紹介して溶け込んでいく冬真のシーンに、甘い結末かなと思った瞬間、このシーンは霧消する。この場面は冬真の幻想だったのか、冬真の切ない想いであったのか?
アリスは、自らすべての自分のデータを抹消する。つまり冬真の幻想をすべてなくしてしまうのだ。人間関係を大事にして強く生きて行けというアリスの冬真に対する強烈なメッセージなのか。アリス自体が冬真の幻想だったのだ。
街を彷徨する冬真にフト、アリスに似た女性がすれ違う。それは劇の冒頭、行き交う人達の中で、やはりすれ違った女性もアリスに似ていた。巧みな構成であり一人の青年の孤独感と哀切が良く表現されていた。
ただこれはあくまでも作者・万代美月が書いた台本の良さであって、アマチュア演劇では戯曲の占める大事さが大きいと思うのだが、残念ながら舞台表現としては稚拙である。それは演出が無いということと、演技もまったく舞台の表現技術として未熟すぎるということだ。
登場人物のほかの各スタッフは、万代美月と篠永早姫の二名が氏名だけ紹介されているだけだ。やはり総合芸術としての演劇では、きちんと作者、演出者そのほか、各パートの責任者を紹介するべきだろう。もしかしてそういう組織を作っていなかったのかもしれないが……