編  集  後  記


後 記 

まず、発行が大幅に遅れたことと、プリンターが古くなったために文字の一部分に滲みが出たことを弁解しておきます。印刷の途中だったのでそのまま進めたのですが……その前にまず、

前25号の訂正              09年8月1日
P6 上段  誤=「『死』と性(生」』、タナトスとエロス〜
       正=「『死』と性(生)」、タナトスとエロス〜
P21 下段  「さて〜」以降は、上段と別の文脈になるので、その前に☆印を入れて区別します。
P37 下段  終行=  誤=「確立」 
正=「確率」
P40 上段  本文初行  誤=「6月17日」
            正=「5月17日」
(すべて、電子版は修正済みです)
P36 上段 9行目  誤=ジャバンニ
            正=ジョバンニ



■教文演劇シンポジューム   09年8月22日
7月末から8月末の一ヶ月にかけて開催された「教文演劇フェステバル」の最後に、東京から劇作家・演出家の坂手洋二氏と同じく北海道出身の劇作家・演出家の鐘下辰男氏を招いて開かれたこのシンポジュームに出席した。その中で現在の演劇状況に触れて語っていたのが印象に残った。
それは現在の演劇が、消費され商業主義に埋没されている。その中でどう自分を表現してなおかつ生きていくのか。逆手にとる方法、つまり商業主義の演目の中に自己主張をさりげなく盛り込む方法、あるいは過激に自己主張を物言う方法などで苦労している。
 どちらにしろ、観客が支持しなければ成り立たない。だから演劇の現場は、その日その日の切った張ったの世界なのだ。
 どのようにして演劇の現場に執拗に生きていくのか? そしてなぜ生きていくのかが問われるのかもが演劇人の日々であるのだ。
 日常は日々変化する。その変化を演劇はどう受け止めてどう表現するのか? それが演劇表現の最大かつ究極的なゴールなのではないのか? 演劇人は危機意識を常にもたなければ表現者としての意味はないのだ。
そして表現の方法について、一般に「物語に寄りかかり過ぎる」のが不満だということを強調していた。
演者の「肉体性を重要視すべきである」、という視点を強く語っていたのが印象的であった。
僕はどうしても物語性の、特にメタファーについての関心が大きいので両氏の話は衝撃であった。
僕は、常々「演劇は説明ではない、ましてや講義でも講演でもない、舞台で説教するな」と言っていることの、もう一つ深いところでの警告でもあろうか。
僕の言い方だと、極端にいうと「演劇は戯曲である」とも誤解されかねない。深く思うところがあった。
短編演劇祭の審査での両氏の批評では、そのことに関して、「物語を語ることばかりでオチが付く話がほとんどである」と不満であったようだ。
それとは直接の関係はないが、僕が「お二人の演技者としての経験とその感想をお聞きしたい」という質問をしたのに対して、坂手氏は「演技者として出演することはあるが、自作品では難しい、意欲はある」、鐘下氏は「最近、自分の才能のなさに諦めた」というお返事であった。作者と演出者と役者の関係が垣間見えて面白い……

■劇団『どくんご』   09年8月30日
劇団『どくんご』というネーミングは「毒りんご」の略ではないかという説を唱えたのが、江別で一緒に観劇
した伊東仁慈子氏である。
なかなか面白い発見であるが、考えてみると、「劇」とは、「虍」(虎)と「豕」(猪)という二大猛獣? が、?(刀)で闘うという意味の文字だから、「劇」には闘争=葛藤という「劇薬=毒」があり、一方副作用も大きく、劇団名にはぴったりなのかなと思ったわけだ。
この夏は、その劇団『どくんご』に掛かりっきりであった。詳細は今号で特集を作ったので見ていただきたいのだが、何でこんなに入れ込んだのか今、考えると不思議な気がする。
一種の副作用による中毒状態だったのかも知れないが、これも『劇』の猛毒が効いたのかもしれないと思う。その毒のせいで、今号の発刊が大幅に遅れた。特集という馴れないことをやったのと、空欄に写真を入れようとしてこれも初めての事で、画像ビギナーとしては、技術的に四苦八苦してさらに大幅に延びてしまった。
空欄を作りたくなかったので無理やり写真を入れたんだが、舞台を観た方は何となく思い出していただいて、残念ながら見逃した方は雰囲気を感じてくださって、その上で関心を持たれた方は劇団のホームページやリンクしている全国の皆様のブログにたくさんの良い写真があるので、そちらをご覧いただいた方が、ずっと良いかなと思います。
なおこの写真は、溝口信義君が深川・留萌で撮影したものを借りました。巧く再生出来なかったのは僕の責任です。原版は素晴らしいものです。



今期にこれ以外に観た舞台

●百物語/岩波ホール発
  文化交流ホール「み☆らい」 09年7月6日

●時給探偵/シアター・ネーブル
  旭川・シアターコア  09年7月26日

●Confession 告白 ユリシーズの帰還は可能か? /風蝕異人街
  スタジオ阿呆船  09年8月8日

●ペリクリーズ/楠美津香ひとりシェイクスピア
  シアターZOO 09年8月15日
 
●冬のバイエル/TPS
  シアターZOO  09年9月15〜16日