演 目
きれいな鳥がとまるのを待っている
観劇日時/09.6.13.
劇団名/intro
公演回数/表記なし
作・演出/イトウワカナ 舞台監督/高橋詳幸 照明/相馬寛之 音響/橋本一生
舞台美術プラン/川崎舞 舞台美術製作/アクトコール 衣装/中原奈緒美
照明オペレート/稲田桂 女子マネージャー/富樫佐知子 制作/小室明子

少女趣味的抒情詩

 舞台前面には5人掛けの長テーブル、両サイドに二人の椅子があり、合計7人分の応接間風の設え、その舞台の背後には、灰色がかった緑色の細い板が1bほどの長さに切られて舞台の天井いっぱいにアトランダムに積み上げられ、それが老樹のように5本、それぞれに空の白い鳥籠が5・6個ずつ吊下げられて、象徴的で現実離れのしたイトウワカナ・ワールドを創り出している。
登場人物たちの衣装もお伽噺の絵本から抜け出したような不思議な格好だ。たとえば父親は王様のようだし、お手伝いたちはいじめられていたころのシンデレラみたいだった。
ここは鳥類博士(=宮澤りえ蔵)の家だ。そこへ烏丸よしこ(=田中佐保子)が訪ねてくる。彼女は転居のためペットが飼えなくなり引き取り先を探して、ここへ辿り着いたのだ。
母(=菜摘あかね)は少女のように単純だが妊娠している。おそらく想像妊娠……。長女・ニコ(=今井香織)は父の先妻の連れ子でわがまま一杯。次女・キキ(=新井田琴江)と三女・ララ(=奈良有希子)の二人はなぜか小鳥に成り切っている。
烏丸の持ち込んだカナリアは別れた男からの誕生日プレゼントであった。そこへ偶然のようにその別れた鳥村よしお(=佐藤剛)が訪れる。彼は博士の弟子だった。
わがまま娘のニコは、自分の誕生日を理由に、そのカナリアを欲しいと言い出し、さらに唐突に鳥村に求婚する。
実はこのカナリアは鳥丸がプレゼントを食べてしまい、今のカナリアは彼女が後で買った二代目だったらしい。「らしい」と言うのは、このあたりちょっと退屈して浅い眠りに落ち込んだために僕の妄想で、そうだったら面白いかなって思いこんだのかもしれないからだ。上演台本を読めば分かることだが、それはやりたくない。あくまでも舞台を観た印象が大事だし、そこから得た妄想も一つの受け取り方だと思うのは強引だろうか?
お手伝いのササキ(=のしろゆう子)、ノミヤ(=石田聡子)、料理人・クック(=大高一郎)たちがいる、まるで王侯貴族のような一家の様子もお伽噺のような設定だ。
さてこのワカナ・ワールドで展開される物語は何を表すのだろうか? 「虚飾に飾られた幼い心情による愛の虚無か?」それとも題名の通り「愛の到来を待つ」女性の儚い心情なのか?
この小物語を大物語に換算すると、「思慮浅き人間たちの表面だけの行動に対する、悪意の反抗」とみるのは過大評価か……
その他にも、何度か浅い睡魔に襲われたので確信的なことは言えないが、どう考えてもそれ以上のことは出なくて、でも何となく発展途上の不思議な一つのある世界を予感させたのであった。