演 目
コバルトにいさん
観劇日時/09.4.19.
劇団名/劇団イナダ組
公演形態/08年12月「東京劇団フェス08」グランプリ受賞
作・演出/イナダ 舞台/福田舞台 照明/高橋正和
音響/奥山奈々・菊池英登 宣伝美術/小島達子
舞台監督/中村ひさえ 衣装/稲村みゆき・服部悦子
制作/小柳由美子・根井聡子・井土雪江・駒野葦代・新浜円
岡田まゆみ・畠山真波・田中絵梨
企画・制作/劇団イナダ組
劇場名/コンカリーニョ

純情悲恋劇

 07年9月に初演されたときの報告に、「底辺を生きる男の切ない夢」と書いた。そして「現実逃避するコバルトという男の、それは妄想でしかなく、現実逃避そのものが夢想人生であることに見合った妄想なのだ。」「しかも現実のアサコは、コバルトの妄想的好意を非情にも突き放す。夢想と妄想とで現実を拒否する、人間的人間・コバルトは何処へ行くのだろうか?」とも書いた。
今回の上演でもその基本は変らない。だが現実のアサコ(=山村素絵)が初めから登場することによって、彼・コバルト(=納谷真大)の妄想が現実味を強く帯び、そのためにコバルトの悲哀が一層強く感じられる。
コバルトの役創りも一種、純粋性の高い、例えば「激しい動き」とか「甲高い発声」などによって、裏の無い性格を表し、哀切感を強調していたような感じであった。
純情であるがために理想を裏切られた悲恋劇であり、素直に生きるためにホームレスになった男の、時代に対するアンチテーゼであろう。
その他の出演者。「おい」(=武田晋)、寺田(=江田由紀浩)、兄を探す女(=小島達子)、女を捜す男(=高田豊)。
「おい」と呼ばれる男は、二番目のコバルト候補であり、寺田は現実と幻想とを行き来する人間、兄を探す女も見方を変えれば三番目のコバルト候補であり、女を捜す男とは殺人犯らしいアサコを探す刑事であり、その辺はサスペンス調であり、エンターテインメントとしての見所でもある。