演 目
あしたブログ
観劇日時/09.4.3.
劇団名/JOE Company
作・演出/小野寺丈 照明/大串博文 音響/黒沢靖博 
舞台監督/早坂富雄 演出助手/たかぎひろみち
制作/島田敦子・田中絵美
劇場名/下北沢「劇」小劇場

設定のリァリティ

 まず小さなことを書いておく。芝居の内容が良かったならば帳消しになるような些細な事柄だ。だがやっぱり黙過できない焦慮が残る。
僕は当日券で観ようと思ったので予め電話で発売開始時間を確認しておいた。全席指定なのでなるべく早くに行こうと思って劇場に到着したのが3分前、客はまだ僕の外に一人であった。指定された時間になっても劇場の窓口もロビーも開かない。窓口には人が居るので開けてもらって聞くと「お待ちください」と待たせて、「準備が遅れていますので少々お待ちください」と言うだけだ。「この窓口で待てば良いのですか?」とさらに聞くとまた「お待ちください」で「ロビーが開きます」とのことである。劇場というのは基本的にサービス業である。
さて開演時間が断りもなく5分以上も遅れた。何の予告や前説もないので、僕は3分過ぎて慌てて携帯電話をoffにしたので、少なくてもそれ以上は過ぎている。そもそも開演時間を延ばすということ自体が契約違反だと思っている。
やがて始まった前説は、主な登場人物3人のベタなコントである。ブログの説明と携帯電話の電源を切る広報だが、臭い演技で白ける。そして圧巻はこのコントの後、長い空白が続いたことだ。客席に異常が感じられたころ客の誰かの「どうした?」という声が掛かり、苦笑っぽいざわめきが客席に走った。もうこうなっては芝居は壊れてしまう。
案の定、ひどい芝居だ。ブログに書いたことが実現するという設定のSFだが、一つ一つのエピソードが荒唐無稽なのだ。現実離れの設定でも、それなりの必然性があれば納得がいく。これらの設定は何の脈絡もなくリアリティもない。
たとえば後に重要な人物になる謎の女性がホームレスなのは良いのだが、この女性がいつも大きな箒で地面を掃いている。この意味が分からない。いつもバス停に居るという設定だがバス停に居るためにはもっとリアリティのある違った設定が必要であろう。
たとえばこの会社に紛れ込む男が和服なのも意味不明だ。それらはギャグだと思えばいいのだが、シリアスな場面では余り面白いとは言えない。熱演だけにひたすら白けるばかりであった。
出演は、サラリーマン・ア守(=東新良和)、上司(=小野寺丈)、同僚(=一条俊)、社長(=藤村忠生)、同僚(=大場達也)、この会社に紛れ込んだ大富豪の御曹司(=成瀬優和)、OL(=栗須絵里子)、謎の女(=北川宏美)、同僚の幼馴染みで偶然この会社に入社したOL(=山本容子)。こう紹介すると人物配置と筋立ては中々魅力的なのだが……特に謎の女は、主人公・ア守の幼いころ生き別れた母親を暗示するシーンなどベタといえばベタだが、それまでの流れと違った魅力があったのだが。この二つの話が巧くジョイントしなかった。
「ブログが予言する」ということの意味が「文明の崩壊」とでもいうようなメッセージがあれば良いのだが、単なるギャグに終わってしまったので演劇的な魅力が少ないのだ。