演 目
家を出た
観劇日時/09.4.2.
劇団名/劇的ポップテンZ
作/鈴江俊郎 演出/磯村純 美術/阿部一郎
照明/鷲崎淳一郎 照明操作/小澤槇
音響/TAISHI 舞台監督/川上祥爾 
宣伝美術/どせい 制作/劇的トップテンZ 加賀谷沙瑶
公演形態/結成解散公演
劇場名/下北沢 小劇場 楽園

生きることの切なさ

 この芝居は「演劇集合体マキニュウム」が、08年10月に札幌のレッドベリー・スタジオで上演した戯曲であり、それは中々良い舞台であった。
その時の設定では小さな病院の待合室のような感じであったが、今回は小さなホテルのロビーのような造りであり、それはどっちでも良いのだが雰囲気はずいぶんと違う。
いずれも50〜60人規模のミニ劇場だから同じような造りになるのだろが雰囲気は随分と違うのだ。
マキニュウムの舞台は硬質であり乾いた感じであったのに対して、このポップテンZの表現は情緒的な気がする。
大体、この集団は「結成・解散公演」というタイトルでも分る通り、この舞台を創るためにだけ集まった集団であるということで、その思い込みがよく分る気がする。
話はだんだん後で分かってくるのだが、ここは理不尽に亡くなった人たちが、そのことに納得して完全に黄泉の国に消え去るまで一時滞在する施設なのだ。
納得して消え去ってもそれは文字通り完全に無になって消えることでしかない。そして理不尽に死んだからといって現世に戻ることは出来ない。
交通事故で死んだ大学バスケット部の4人(=永尾敦・三宅正徳・本河学之・奥田隆仁)、その女子マネジャー(=藤原桂香)、いじめられて死んだ女子高校生(=北村祥子)、そしていじめて逆襲されて死んだ女子高校生(=横山真希・吉岡ゆう子)、病死した若者(=森一生)、彼を追って後追い心中した女の子(=深沢奈美)、彼らの世話をするのは(=橘あんり)でありその上司は(=鳴海ミツ)である。
だが実はこの管理者である二人も、ここで最終の決心がつかない亡者たちなのであった。
学生たちは死んだという実感がないまま、相変わらずトレーニングを続けている。敵対する女子高生たちは、なぜか互いの状況を認め合っているようだ。病身の男は煩悶の末、ある日突然消える。そして世話役の女性も消え、マネジャーの女子学生が、後任の世話役を志願する。
ここにいることは、現世を生きていることと同じことなのかもしれない。何のために生きているのか、いつ死ぬのか、必ずいつかは死ぬのだがそれでも生きている。そして死ぬのはいずれにしても理不尽な現象である。それでもマネジャーの女子学生はそんな形でも、やっぱり生きることを選ぶ。
いま生きてもそれは取り敢えずでしかないのに、取り敢えず生きることを選ぶ。その切なさは誰も否定はできない切なさなのだった。