演 目
他人(ひと)の手
観劇日時/09.3.25.
劇団名/Theater・ラグ・203
公演回数/水曜劇場Vol.2 再演
作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸
音響/吉田志帆 照明/田村一樹 宣伝美術/久保田さゆり
制作/Theater・ラグ・203
劇場名/ラグリグラ劇場

気づかぬ人間関係の歪み

 縫製工場で働く彼女は、仕事である縫製作業で、歪んで縫いあげそのミスを詰問される。本人は慎重に縫製し確認しているから歪んで出来上がっていることに納得がいかない。しかし歪んで出来上がったことは事実なのだ。
彼女の人間関係、つまり愛の破綻した彼との関係、そして最重要容疑者として彼女を尋問する刑事との関係も、そのように自覚がないまま、いつの間にか歪んでしまっているのかも知れない……
とすると、この芝居はある一面では、自覚のない人間関係の歪みの芝居とも見ることができるかもしれないのだ。
このように、見かたによって様々な局面を表す。もちろんそれは最初に観た時から内蔵してはいたのだが、別の大きな意味に気を取られてうっかり見逃していたわけだ。何度も観ることによって別の側面が浮きだしてくる仕掛けになっているのだ。最初からその多面性に気づかないのも迂闊だが……
       ☆
なお、この作品については、僕の友人・梶司が克明に分析した文章を書いてくれた。この号の巻末に全文を収録したが、それを読むと、僕が三回観て感じたことを、たった一回の観劇で、余すところ無くキチンと整理して書き込んでいることに驚く。
それほど僕の観方は細部に拘りすぎて全体が見えなくなっているのじゃないかと危惧をした。「木を見て森を見ず」、あるいは自分の世界に強引に引き込もうとしてはいないか? と今更ながらわが心を省みて、つくづく初心に戻ろうと思ったのであった。