演 目
他人(ひと)の手
観劇日時/03.3.18.
劇団名/Theater・ラグ・203
公演回数/水曜劇場Vol.2
作・演出/村松幹男 
劇場名/ラグリグラ劇場

真実の対立と孤独の人生

 初日に続いて2回目の観劇である。前回は殺人容疑者の女(=久保田さゆり)と取調べの刑事(=平井伸之)、そしてかつて愛し殺害された恋人(=柳川友希)の三人の、それぞれの真実の食い違いの物語という一面が強く印象に残ったのだが、今回は三人それぞれの孤独な精神という側面が感じられた。
孤独であるがゆえに己の真実に固執するという心の動きが、人間の切ない心情を訴えるようだ。
ラストに近く、容疑者の女が実はアリバイが確認されたというドンデン返しがあるが、これはどうだろう? こんな簡単なアリバイがあったのに最重要容疑者として取り調べていたということは現実的には相当な無理がある。
それともこの物語を成立させるためには、こういう不自然な虚構もありなのか? たしかに演劇的虚構というのはあり得るが、このケースは良いのか疑問である。
女が白衣を着て、手の機能について解説する場面が何度か登場する。これは女が殺害された男の手首を切り取って保管するというラストに繋がるのだが、犯人ではない女が腐乱死体になる前に切り取ったことになり非合理的だが、僕はこの女が密かに保存する愛した男の手首は、彼女の幻想なのだと了解するのだ。