演 目
天切り松
観劇日時/09.2.17.
劇団名/イッツフォーリーズ
公演名/旭川市民劇場2月例会公演
原作/浅田次郎「天切り松 闇がたり」(集英社刊)
脚本/水谷龍二 演出/鵜山仁 音楽/吉田さとる
作詞/佐藤万里 美術・題字/中嶋八郎 振付/川西清彦
照明/森下泰 音響/清水吉郎 衣装/菊田光次郎
歌唱指揮/山口正義 所作指揮/藤間貴与志
稽古ピアノ/太田裕子 脚本協力/金房実加
演出助手/本藤起久子 舞台監督/岩戸堅一
プロデューサー/土屋友起子
劇場名/旭川公会堂
出演/左とん平(天切り松)ほか12名

義理人情的な体制批判と正義感

 「天切り」とは、屋根の一部を切り取って侵入する盗賊であるそうだ。そのオーソリティ松蔵(=左とん平)が、大正期の小僧時代を振り返って語る、義賊物語のオムニバスである。
義賊とは盗賊でありながら強欲な資産家しか襲撃せず、得た財宝は貧窮者に施すという盗賊である。ターゲットは資産家のみならず汚職政治屋や腐敗軍人などだから、庶民の喝采を浴びたのだ。裏家業だからそこは技術と知恵との積み上げで、そこに上下関係の義理と人情が重なる。
「天切り松」の物語は連作短編であり、その中から4編の作品を描いたミユージカル仕立ての舞台化である。
松蔵が現在の留置場で若き日の物語を語るという構成になっているので、そのころ松蔵が10代だったら現在は100歳を超えていなければならず、かなり時代が合わないが、それは大局的に無視してもいいのだろうが気になると引っかかる。
松蔵の存在は逆に言うと、現在の逼塞感に一つの突破口を、心理的風穴を開けようという目論みとも考えられる。
最近この政治状況に、なぜ直接行動を起こさないのかという世論さえ感じられる世情にあって、もしかしたらこの舞台は一種のアジテーションにもなるような気もする。
無法は悪であるのに、その力を使わないと自滅するのではないか? という不安を煽るのか、ガス抜きになるのか?
左とん平は、意外に軽妙だけでなく哀愁と重量感もあり、思ったよりも好演であったが、登場人物全員がピンマイクを使っているために、舞台両脇の大型スピーカーから大音量の声や音楽が聞こえるのがとても邪魔になって、こういう形でないと上演できない大量動員のシステムに腹が立った。