演 目
ぐるぐる地獄
観劇日時/09.1.31.
主催/北海道舞台塾リーディング公演
脚本・演出/納谷真大 スーパーバイザー/秦建日子 スパーバイザー/イナダ 振付/藤本章子
演出補/江田由紀浩 照明/高橋正和 音響/奥山奈々
舞台美術/池田ともゆき 舞台製作/FUKUDA舞台
衣装/岡本嚇子 宣伝美術/小島達子
広報・公演パンフレット制作/フリーペーパー マグネット
舞台監督/渡部淳一・坂本由希子
主催/北海道舞台塾実行委員会・
北海道・財団法人北海道文化財団
劇場名/深川市文化交流ホール「み☆らい」

新しいリーディング

 「リーディング」という公開方式には、ある疑念を持っている。様々な条件をクリァ出来ないから簡潔な方法として、「配役された役者が戯曲を読むだけ」というイメージが強かったからだ。「それは演劇として単なる手抜きじゃないか」と思っていたからだ。それなら戯曲そのものを自分で読めば良いのだ、とも思っていた。
「何が出るかわからない、全く新しい『納谷流リーディング』公演」というジャックに魅せられた。
納谷氏は開演前の前振りで、「リーディングには定義がない、ならば様々な手数を用いて面白いものを創ってみようと思った」と語った。
基本的には配役された役者が台本を読むのは、「リーディング」であろう。だが大道具や小道具、細かな動きはないけれども全員が黒子のような衣装で、沢山の椅子を使い分けて立ったり座ったり移動したり群舞を踊ったり、映像や音楽・照明などを普通に使ってかなり演劇的に上演された。
だからちょっと表現の異なった普通の演劇の一種と観てしまったのだ。例えば「ジーパン・シエクスピァ」(古いなあ)みたいに……。それなら、いっそ、普通の演劇として上演したらどうなのか? って思ってしまう。
話は、OL(=今井香織)が大事なときに彼(=高田豊)からのメールでの縁切り話に困惑して仕事をミスし、上司(=齊藤雅彰)に叱責される。
一方、その上司は糖尿病の自己管理の不備について担当医師(=松山ジョー。)に叱責される。
さらに医者の妻(=林千賀子)は、自動車学校の教員であるOLの彼との浮気がばれるが、逆に夫の医師の弱気に付け込んで喧嘩となる。
誰かのペットであるハムスター(=小島達子)は、自由を求めて脱走するが、進退窮まる。なお小島達子は様々な役で登場する。
つまり五人の男女が、ぐるぐる回って底の見えない地獄に落ち込んで行く。普通、シチュエーション・コメディっていうのは、一つの状況の中に複数の人間が自業自得で逃げ道のないラビリンスへ一斉に追い込まれていく滑稽さを描いたものだが、この場合はハムスターを含めて、それぞれの地獄が独立しているので、面白さが一つの場面に収斂して行かない。だから可笑しさが大爆発しない。
同じ作者の『イージー・ライアー』や『あっちこっち佐藤さん』の、ぎりぎりと追い込まれて逃げ場のない苦しさにのたうつ人間たちの滑稽な舞台に較べると、かなりエネルギーが低い。
今後、3年間で完成させていくそうだが、その辺りがどうなるのか期待しよう。


■1月の舞台から■

☆ 秘密の花園               東京乾電池
 ロマンチックで切ない物語。唐十郎の本質は「純愛」だと思っているが、正にそういう物語に魅了された。
現代演劇中興期の傑作。

☆ なよたけ               カイ・レパートリィ劇場
 「秘密の花園」と並べると、なにか共に古い作品なのに、共通のロマンが感じられて面白い。
現代演劇発祥期の傑作。

☆ 冬のバイエル                TPS
上演する度に挙げなければならないのは当然だと思いつつ、今月は三作品とも旧作というのはいささか忸怩たる思いがある。
現代演劇現在の傑作。
(上演日順)