演 目
W.i.f.e.
観劇日時/09.1.27.
劇団名/Co.山田うん
平成20年度公共ホール現代ダンス活性化事業
振付・演出/山田うん 
出演/岩渕貞太・尾形直子・山田うん
題材/A・チェーホフ『妻への手紙』
衣装/丸田ひかり 照明/関根有紀子
劇場名/深川市文化交流ホール「み・らい」

コンテンポラリィダンスについて

 コンテンポラィダンスの面白さを考えてみた。非日常的というか抽象的な身体の鍛えあげられた動きを使って、ソロであろうと複数のダンサーであろうと、さらに映像や小道具ときには大道具まで使って繰り広げられる展開から、観客が自由に物語を勝手に立ち上げて想像から創造することにあろうと思っている。そこには演劇的な魅力が大きい。
ところが今日のこの舞台は違った。なにしろあのチェーホフの『妻への手紙』というれっきとした原作があるのだ。
したがって舞台は三人の男女のダンサーによる物語の開陳になってしまう。観客が想像するのは極めて狭い範囲でしかない。
演劇的といえばまさに演劇的であるが、音楽劇というのがあるのと同様にこれはダンス劇であり、僕の思うコンテンポラィダンスの魅力とは違ったものになる。
アフタートークでその点を質問したら、「初めは確かに、そのつもりで創ったのだが、だんだん物語に拘らなくなった。だから自由に感じて欲しい」との答であった。
演劇でもそうだが、創造者が考えたことと観客が感じたことが違ってもいいわけで、むしろ多様の解釈が矛盾なく存在する作品が良いということになろうと思う。
そういう意味では、この『妻への手紙』というモチーフはたんなる取っ掛かりでしかないのかも知れない。事実、おそらくこのタイトルがなくても、舞台から受け取られるものは男と女の関係に限らず、人間と人間の葛藤と、そこから生じる苦しみと悲憤の発散などという感情を、非日常的な鍛え上げられた肉体の動きで表現したと感じられる。
とくに印象的だったのは、映像と小道具に「文字」を多用したことだった。これは対象が作家・チェーホフということにあるのだろうと思われる。
ラストの映像がWhat is foreverであり、forとeverを切り離して4行に表示して、その頭文字を拾うとWifeとなってタイトルの『妻への手紙』と重なるなど苦しい遊びというか、機知を示したというか……