演 目
冬のバイエル
観劇日時/09.1.25.
劇団名/TPS
公演回数/第27回
作・演出/斎藤歩 
照明プラン/熊倉英記 オペレーター/矢口友里
音響/百瀬俊介 宣伝美術/若林瑞沙
制作/阿部雅子・横山勝俊
ディレクター/斎藤歩
プロデューサー/平田修二
企画・制作/北海道演劇財団
劇場名/新札幌・サンピァザ劇場

やはり感銘

 今日の観劇でこの芝居、何回観たのか調べてみた。最初が02年12月。それから今日も含めて7回しか観ていない、もっともっと何十回も観たような気がしていたのだが……
その最初に観た感想を読み返してみたが、すべてはその感想に尽きる。その後、何度か感想を書いているのだが、こっちに進歩や新しい発見はほとんどない。それほど完成された芝居であったのだと思う。
その全文を再録することにしよう。02年12月23日、劇場はZOOであった。なお配役は今回の分です。
「8年前に母を亡くした20歳の短大生の娘(=齋藤由衣)と、営業職サラリーマンのその父親・杉山氏(=山野久治)。子供が欲しいのに出来ない、あんまり深くものを考えていないような現代風の若い橋本夫婦(=木村洋次・宮田圭子)。ピアノ教師の若い女(=林千賀子)と出来損ないのバカな兄(=斎藤歩)との、まるで寅さんとサクラのような兄妹。
この3組の男女が奏でる、ささやかな、だが当人たちにとっては人生の重大事である日々の暮らしの出来事が、軽やかな諧謔味を伴って展開されていく。一台のピアノがそれぞれの場面のエピソードの中心になって物語が綴られる。
この1時間半のストーリィを語るのは、この劇にとってそれほど重要なことではない。
ラスト近く、たった一人の肉親の兄の不幸に涙するピアノ教師の「本当に一人になっちゃった……。でも、生きていかなければ……どうやって生きていけばいいの? ……杉山さん……」という台詞に象徴される、バカな人たち、でも愛すべき哀しい人たちが一生懸命に生きようとする物語は、まさにチエーホフを彷彿とさせ、この台詞は「三人姉妹」ラストのオーリガたちの台詞に重なる。
このピアノ教師の杉山氏に対するフアザーコンプレックスの切ない情感が、そこはかとなく見え隠れするのが哀切。それを知ってか知らずか、不器用で純朴で誠実な中年男の杉山氏……
そしてラストは、忘年会で遅く帰宅した杉山氏が、亡妻の遺品のピアノを見つめていると、パジャマ姿の娘が「パパ、ピアノを弾いた?」といって起きだしてきて、「今夜も寒いね……」という親娘の会話が冒頭のシーンに回帰する。すべては杉山さんの夢だったのか?(後略)」
さて今回の発見、音楽が印象的であったこと、ベースはバイエルなのだろうけれども劇の雰囲気にとても合っていることに、いまさらながら気が付いた。逆に無意識に受け入れていたのだろうか……
最初、父親と娘の会話から察すると時期はおそらく12月の下旬くらいと思われ、それからいろいろとあって最後は多分早くても1月の下旬くらいの感じなのに、まだ年末であったのはちょっと違和感あったが、それほど目くじらを立てることでもない。事実、僕も今日で初めて気が付いたくらいだから……
ともかく、初演以来7年の間に7回の舞台を観て、そのほとんどが違っていないと思われるのに、何度観ても初見の感度が変わっていないのも珍しい作品であり、古典的な芝居である所以であろうか。