2008年12月
演 目
子供のように話したい
観劇日時/08.12.6.
劇団名/弦巻楽団
公演回数/#8
作・演出/弦巻啓太 演出部/山崎亜莉紗・藤原博之
照明/相馬寛之 音響/橋本一生 美術/中川有子 衣装/佐々木青 制作・印刷物/石上エリ
劇場名/シアターZOO

大物語と小物語

 劇場へ入るとまず目に付くのは、山小屋風の空き家の窓から見える裏山の冬景色と、その小屋の周りを取り囲むように立っている白樺らしい数本の樹木だ。
現在は冬景色であり、それはかつて同じ高校を卒業した4人の女子高生(=ひばり/知北梨沙・かえで/石川藍・草子/佐藤春陽菜・菜々/藤谷真由美)たちの20年後の再会の場面であり、そこに同行しているのは菜々の娘(=小林花絵)と菜々の夫でかつての教師(=楽太郎)。そして草子の別れた夫でかつての同級生だったが死んだために亡霊となって登場する隼人(=塚本雄介)。
それからさらに10年前は秋の落ち葉に囲まれているシーンであり、そこでは隼人は元気であり、ひばりは流行作家として売り出し中、小林花絵はその担当編集者として二役で登場する。
またその10年前の、ちょうど彼女らが卒業証書を授与されて集まった場面では春の雰囲気の風景に変っていた。つまり20年の変化を10年ごとに逆に辿っていくという凝った構成になっている。
この景色の移り変わりは、風情があって狭い舞台が大きく広く季節感が良く感じられて、この舞台装置を眺めているだけでも楽しめる。
4人それぞれの変化はあるけれど、何か総ては男女の関係の話ばかりで典型的な小物語。こういう身辺雑記みたいな、女たちの葛藤が面白く描かれているけれども、それだけの話であり物足りないのだ。
僕はどうしても、その小物語の奥にあるいわゆる大物語を観て何かを感じたいのだが、無い物ねだりであろうか?
「大物語」とは「社会や人間の大きな営み、歴史などを感じさせる物語であり、宿命による悲劇に到ることが多い」が、「小物語」とは「少数の人たちが身近な葛藤を演じるだけの物語で喜劇となることが多い」とでも言おうか。
ところで、この『子供のように話したい』というタイトルは何を意味しているのか? 一種のピーターパン症候群ともいうべきものなのであろうか? アラフォーの女たちが高校時代の想いから離れられず、ついに陥った悲劇を喜劇的に表現したということであろうか?