2008年11月
演 目
サイレンとサイレント
観劇日時/08.11.2.
劇団名/演劇ユニット イレブン☆ナイン
公演回数/第5回公演
作・演出/納谷真大 照明/広瀬利勝 音響/三浦淳一
舞台監督/元イレブン☆ナインの有志たち・イナダヒロシ 宣伝美術/水津聡 美術・衣装・小道具/元イレブン☆ナインの有志たち
演出助手・雑用/畠山由貴・篠田浩子・戸田和美 協力/川井智春・北あかり
制作/劇団イナダ組 プロデューサー/嶋智子 主催/イレブン☆ナイン
劇場名/コンカリーニョ

ユートピア・コミユニティとしての生産工場

 かつて自殺の名所であった深い森の中に、犯罪者が働く怪しげな工場があった。その一人にサイレンと呼ばれる煩い男(=納谷真大)、そして寮の賄婦(小島達子)の娘、サイレント(=佐藤紫衣那)と呼ばれる聾唖者の少女がいた。
そして工員である犯罪者たちだが、彼らは凶暴犯ではない。寝たきりの母親の依願で、長らく悩んだ末の嘱託殺人者(=松山ジョー。)とか、そういう類の柔らかい犯罪者たち(=菊地英登・和田雅信)たちで、工場長は(山田マサル)。
そこへ紛れ込んだ自殺志願のリカコ(=今井香織)とAくん(江田由紀浩)。
物造りの現場である工場を、一種のユートピァ・コミユニティと幻想する設定は、劇団「フイクション」の『ヌードルス』『石のうら』『しんせかい』に共通するのは偶然か?
人間界と対比する形で天狗(=本吉純平)と河童(=上總真奈)が登場し、人間は彼らとコミニュケーションをとることは出来ないが、やはり人間と直接的に会話が成り立たないサイレントの三人とで三角形を作って、この人間たちを客観視する位置に立つ。
前作・前々作の『イージーライァー』『あっちこっち佐藤さん』と、人間の愚かしさ弱さの滑稽さは共通するけれども、前二作の乾いた可笑しさに比べて、この『サイレンとサイレント』は情緒過多での湿っぽさに物足りなさを感じる。