2008年10月
演 目
いさかい
観劇日時/08.10.13.
劇団名/TPT
作/マリヴォー 訳/阿部崇・小溝佳代子 台本/木内宏昌 演出/熊林弘高 装置/池田ともゆき 照明/井口眞 
衣装/原まさみ 音響/長野朋美 
ヘア&メイクアップ/鎌田直樹 舞台監督/中瀬古靖
劇場名/東京・ベニサンピット

お伽噺的な寓話劇

 ある王様が、男と女のどちらがより背徳者であるのかを実験するために、産まれたばかりの男女児各2名ずつを、一切の人間社会から隔絶して、一人一人を男は大人の男1人(=塩野谷正幸)、女は女1人(=藤川洋子)で育て、彼ら4人が18歳になったとき(=毬谷友子・渡辺真起子・田島亮・藤沢大悟)それぞれカップルとして会わせる。
国王は途中で死亡したために、その実験は王子(=塩野谷正幸・二役)が後を継ぎエミルアンヌ(=濱ア茜)という女性と共に監視者となる。
さてそれから、その二組の初めて他人と出会ったカップルはどうなるか? というお話である。予想通り4人は入り乱れて恋の鞘当を繰り広げる。
どちらがより背徳者であるか? という結論は無意味だ。そんなことはわざわざ実験しなくても先刻承知だ。問題はむしろその実態を丸裸にした滑稽さだ。
ラストは、突然現れた実験とは何の関係もない新しいカップルのメスリス(=杉内貴)とディナ(=松平英子)は、「君たちとは仲良くなれないよ」と一言、去る。そして最後はエミアンヌが「もう悪ふざけは充分、行きましょう」で、台本は終わっている。舞台はさらに4人が抹殺されて終わる……だが台本にはそういうト書きはない。
アフタートークで、ある観客が「異常な生い立ちをもつ人物の役作りについて」という質問に、毬谷友子さんは「狼少女をイメージした」若い男優は「公園デビユーの幼児のイメージ」となかなか面白い。
僕は「まったく道具のない素舞台なのは、このような寓話的・御伽噺的な戯曲の表現には、観客の想像力を最大限に起こさせて、とてもすっきりとしたものであると思うが、それは最初から計算したのだろうか」と聞いた。
演出家は「やはりいろいろ考えた。布を垂らすとか鎖で仕切るとか思ったけど、結局素舞台にした」という答えだった。
毬谷さんは「衣裳が抽象的で素舞台に合っていると思いません?」とおっしゃいました。ずっと昔から憧れていた毬谷友子さんと一言でも会話が出来たことがとても嬉しかったが、なるほど毬谷さんのおっしゃる通りである。