編  集  後  記


 村井浩さんの読後感 (抄出)   09年1月8日
東京都府中市にお住まいの村井浩さんから、久しぶりにお手紙をいただいた。村井さんとの交友関係は同人誌『風化』にときに応じて紹介しているし、以前、この『続・観劇片々』でも何度か読後感を紹介したけれども、久しぶりにその感想を紹介できることを嬉しく思っています。
『風化』というのは、さまざまなジャンルの人達がいろんな文章や作品を持ち寄って発行している手造りの季刊雑誌であり、僕は主に身辺雑記をエッセイ風に書いている。
酒飲み話が多いのだが、一般には『続・観劇片々』より受けが良いので、いささか忸怩たる思いがあるのだが……
『風化』前号では深川市内の演劇団体が合同して、長谷川伸原作の『瞼の母』をモチーフに、いわゆる村芝居を上演したことの報告を綴ったのだが、それに関して「……深川市の演劇の層の厚いことが分ります。地域の多くの人が芝居を通してさまざまな人生を知っていくのだろう。一度、府中市議会の行政視察として公式訪問をしたいと思いました」と書いていただきました。ちなみに村井氏は僕と同年齢、府中市の最古参市会議員で市民フオーラムの所属です。
そのほか僕のエッセイについて「気ままに生きていて幸福な人だと思いました。『風化』を読むと松井さんの日常生活が見えてくるようで、何気ない動きまで見える思いで、ときに私と似てるところがあると苦笑してしまうことがあります」
という部分では逆に僕が苦笑してしまいました。
『観劇片々』22号の『リァカー・ティジボジダ』では、「(要約)リヤカーが貧しい時代の庶民の象徴であったことを改めて納得しました」
『椅子』について、「事物が過剰になることに依存することは、精神の不在を示す」という記述に、「一つ一つ調べることの大事さを学びたいと思う」と応じてくれた。
おなじく『椅子』について、「夫の亡霊がその恨みを述べることで浮かばれない心境を発散させるという解釈」、そして『無意識』について「予測を主題に強調していれば面白い展開が望めたかもしれない」などという記述に対して、「(要約)芝居のことより論理的な文章の進め方・表現法が参考になりました」と書いてくれた。
『OKUJO ドゥムズデイズ マシーン』について、「明るい終末の虚無感〜野外の屋上のビルだから、眼下にはネオンが点滅し、電車の明るい窓が疾走し、期せずして大都会を背景にした物語を演出した効果」という記述に「芝居を観ない私にも伝わるものがあります」と応じる。僕にはこの言葉が一番嬉しいのだ。
『狂人教育』の「日本と中国との現実の関係だけに留まらず、ある集団と他の集団との関係性をも表現している」という記述について、「私にはそこまで考えつかない」と書いている。
『パンドラの匣』の、「小説をそのまま立体化しても演劇にはならない」という僕の考えに対して、「持論がしっかりとある」と応じてくれた。
後記の「子どもの劇団」という記述に対して、「演劇に関わる層の厚さに何か理由があるのだろうか?」と問われましたが、それは僕自身にも分りません。補助金に言及されていましたが、5年以前くらいまではいろいろとあったのですが、今は市の助成はほとんどありません。国や北海道や、民間の助成を上手く利用する一種の技術は確かにあります。
「深川に5つの子ども劇団がある」と書かれていますが、5劇団のうち、子どもだけの劇団は一つだけなので、僕の書き方も悪かったけどここで訂正します。
以上ですが、僕の一つ一つの記述について一つ一つ丁寧に対応し、全体に非常に好意的に見ていただいています。でもこんなに詳細に読んでくださっていることに深く感謝をしているところであります。

報告を一つ           09年2月1日
今年も演劇雑誌『悲劇喜劇』3月号の特集記事「2008年演劇界の収穫」に紹介されました。A=戯曲、B=舞台、C=演技、D=演劇書(雑誌・評論)という区分けで、62人の演劇関係者の方がそれぞれ推薦されています。
その中で「大衆演劇研究家」の原健太郎さんが、これで4年続けて紹介してくださいました。Dの項で、他の書籍・雑誌といっしょに、松井哲朗 『続・観劇片々19〜22』と誌名と氏名だけですが、とても名誉なことと同時に毎年この時期このように紹介されると、ささやかな小冊子ではあるけれどもまた今年も一所懸命に書かなければと改めて思います。

劇団・深川西校演劇部(仮)    09年2月15日
深川西高校にはむかし演劇部があって、社会正義派の演目だったらしいが、管内の実力校として何度か全道大会にも出場したらしい。
だがここ何年かは消滅したままになっていた。ところが2・3年前から復活したい機運が起こり、希望する生徒たちが動きだしたのだが、学校側では顧問教師の不在を理由に願いは叶わないまま時が過ぎた。
今年、6名の生徒たちは学外で劇団として立ち上がることを決めた。それを知った深川市舞台芸術交流協会が全面的にバックアップする形でついに学外集団として「劇団西校演劇部(仮)」が発足した。
2月15日この皮肉を込めた命名で旗揚げ公演を行った。指導には札幌の人気劇団「イレブン☆ナイン」の主宰者・納谷真大氏と、同じく人気劇団「イナダ組」の作家・演出家・俳優である江田由紀浩氏を迎え、素晴らしい舞台を創った。
深川では第6番目の劇団であり、そのこと自体も全国的にみて非常に珍しいことであると同時に、若い人達がプロの指導者によって新しい演劇表現を創りだしたことを素直に喜びたいと思っている。願わくばこの若い芽が大きく育ってくれることを期待したい。納谷・江田両氏も助言を強く約束してくれたのであった。