演 目
オルガ ピカソの女たち
観劇日時/08.8.2.
劇団名/風触異人街
作/ブライアン・マッキャベラ 
構成・演出・照明/こしばきこう 舞台監督/片山幸子
音響オペレーター/富樫のりこ 
制作/実験演劇集団「風触異人街」
劇場名/アトリエ阿呆船

三人で表す一人の人物とは?

 三人の女、三木美智代・李裕華・宇野早織が演じるピカソの妻・オルガ。
砂浜を表した舞台は、背景に大きなシーツを一杯に飾ってそれに風を当てて揺らめかし、ごく狭くタッパの低い小さな雑居ビルの地下の一室に、いかにも薄暗い夜の海岸らしい雰囲気を作り出すことに成功した。
一人の人物を三人の役者が演じるということは、その人物の三つの側面を表現するのではないのかという期待が大きい。だが実際の舞台はそうは感じられなかった。
一つの思いを三人が代わる代わるに自分の思いとして順次に述べるだけであり、そこに三人の個性というか思いの闘いがないのだ。三人が同じ一人の人物を演じるのであるのならば、三人を並べた意味がなくなる。一人の女の自分の中の葛藤としての劇的効果はなかったと思われる。せっかく三人の実力派女優を並べてこれは勿体ない使い方だ。
実際に本物の砂まで撒いてまで拘った薄暗い夜の海岸風景というのは、この女の心象風景をよく表わしていると思われるというのに、これでは小説を読んだ方が良くはないか?
『風触異人街』は、実験演劇集団というネーミング通り実験精神は旺盛だけども、必ずしも全部が全部成功しているとは言い難い。だがその実験精神に大いなる期待を持って通い続けるのだ。