演 目
腐 蝕
観劇日時/08.7.30.
劇団名/Theater・ラグ・203
公演回数/246
作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸
音響オペレーター/久保田さゆり
照明オペレーター/平井伸之
宣伝美術/久保田さゆり
出演/柳川友希
劇場名/ラグリグラ劇場

楷書体の演技

 死刑執行一時間前の死刑囚と教誨師とのやり取り、ほとんどがこの死刑囚の13人殺しの、袋小路に陥った自己弁護の心情吐露という一人芝居である。
演劇とは、人間同士や人間と社会の葛藤から変化が生まれる過程を描くものという僕の規定からすると、この戯曲は人間の心情を一人称で描く形で、小説に近いと考えられる。
この芝居はすでに、三人の役者が演じていて、それぞれの出演時に報告しているが一言でいうと、村松幹男は心情の狂的な表白、田村一樹は身体を動かして相手役を想像させる演出、鈴木亮介は同じ演出であったが、田村の演技が形に捉われ気味だったのに対して内実が充実していたと思われた。
さて今回は一番若手の柳川友希である。演出的には前の二人の形に近い。きちんとした楷書的な演技は精一杯演じているという感じで好感は持てるが面白味がない。いかにも勉強中という感じだ。
演出としては、僕の規定する一人芝居の第二のパターン、つまり架空の相手役を創って葛藤するという形で決まったようなもので、その形の中にどれだけ真実味を込められるのかという段階に来たのであろうか?
舞台の四箇所が天井からのスポットで照らし出されているが、そのエリアを順番に移動するのがはっきりと分ってしまうのがむしろ頬笑ましいが、役者としては発展途上だ。
せっかくきちんと演じていたのに、中盤、元秘書とやくざの手下の二人の役柄が混合して混乱してしまった。
ラストの「俺はすでに腐っているのか?」「おれは許されるのか?」というモノローグが強く印象に残った。



■■7月の推薦舞台■■

椅子……劇団TPS
遭難……ダリア・リ・ベンジャミン
遭難……劇工舎ルート
良い戯曲はキチンと演じれば良い舞台が創れることを示した。