演 目
遭難、
観劇日時/08.7.21.
劇団名/劇工舎ルート
公演回数/第15回公演
作/本谷有希子 演出・照明/伊藤裕幸 
舞台美術/田村明美 音響効果/高田光江 
音響操作/TAO・加藤さつき 宣伝美術/ナシノツブテ
制作/高田学
劇場名/旭川シアターコア

悪意の強調

 同じ芝居が同じ時期に札幌と旭川で競演された。意図的ではなく偶然である。
こちらのキャストは里見(=田村明美)・石原(=中村ミハル)・不破(=高田学)そして客演の江國(=中谷ユイ)と母親・仁科(=山本幸枝)である。
こちらの里見は、三つの舞台の中で一番、悪意が強く感じられ、意図的に三人を追い込んでいく過程が、強烈に描写されていく。
最も気になったのは、ラストシーンでの里見の大欠伸がカットされていたことだ。『e-blood』と『ダリア・リ・ベンジャミン』のステージではあったのだから戯曲には書かれていると思われる。
あの手この手で他人を巻き込んで、必死に過失を逃れようとして、ついに万策尽きて一人になったとき、倦怠と虚無の描写があるとないとでは大違いだ。
この場面で、人間の小ささと切なさが強く感じられると思うので、なぜこのシーンをカットしたのか分らない。一番強烈に動いた里見が極端に逆転するところを観たかったのだ。
あと、男教師・不破と母・仁科の関係も、やや常識的にみえる仁科とインテリっぽい不破の対比が、ちょっと納得できない感じがしたが、これは好みの問題か?