演 目
まげもん
観劇日時/08.7.16.
劇団名/オペラ・シアターこんにゃく座
公演回数/旭川市民劇場7月例会
台本・演出/鄭義信 作曲/萩京子
劇場名/旭川公会堂

復讐の連鎖を断ち切る物語

 狸の茂平(=酒井聡澄)は罠に掛かったとき、助けてくれた人間の娘・麻(=太田まり)に恋して許婚の狸・春(=西田玲子)を捨てて、麻が探す父の仇・菊地文吾(=川鍋節雄)の捜索に協力する。
ところが皮肉なことに、菊地文吾は麻の姉・絹(=梅村博美)の恋人であった。矛盾に悩んだ茂平は画策する、その過程が描かれる。
茂平の親代わりの彦左衛門(=佐藤敏之)と許婚の春も交え、島田大翼・富山直人・彦坂仁美の三人が何役も演じ、伴奏はピアノ(=服部真理子)だけの賑やかなスペクタクル・エンターテインメントと自称している。
なぜ人間と狸なのかが分らず、話も何だかトレンディ・ドラマの焼き直しみたいでのめり込めない。
 鄭義信という作家は多作であり『ザ・寺山』で岸田戯曲賞も受賞しているが、『千年の孤独』(99年7月)は、孤独な心情と切ない純愛の抒情詩である(『客席から』=『観劇片々』改題=第5号所載)とあるが、僕の印象に残っているのは『冬の向日葵』である。
 それは海辺で海の家を営む一家と、その身近な人たちの日常と、その海の家の没落を描く軽妙と悲哀の物語で、『桜の園』を感じさせた。
だが今日の舞台、観ている周りのオバちゃんだらけの観客は、屈託なく大笑いをして「面白かったねえ」を連発し、大いに楽しんでいるようであった……