演 目
休憩室
観劇日時/08.7.13.
劇団名/弘前劇場
公演回数/公演2008 97年初演
作・演出/長谷川孝治 舞台監督/野村眞仁
照明/中村昭一郎 音響/林久志 舞台美術/鈴木徳人
宣伝美術/デザイン工房エスパス 制作/弘前劇場
劇場名/シアターZOO

裏のマグマが見えない焦慮

 ある高校の職員室が実際の舞台であり、下手袖の内側が隣接する休憩室である。この職員室に出入りする教員やその家族、そして訪れる商人(=永井浩仁)、去年卒業した男子生徒(=林久志)と在校2年生の女子生徒(=平塚麻似子)。
それぞれがそれぞれの屈託を抱えながら、表面は何事もなかったように淡々とした日常が流れる。
その中で印象に残ったのは、在校生の女子生徒であり彼女は誰にも心を開かず自閉症的な存在だが、たった一人の女教師・公民担当(=工藤早希子)の担任とだけはノートを交換していること、それによって他の教師たちの思いがわずかに届いていること、さらに国語教師(=福士賢治)の中国人妻(=青海衣央里)との交流で幾分彼女の心情が解放されていることなどが分る。ただそれは類型的であり叙情的であり、劇的展開ではないところが残念である。
目立たなかった男子卒業生が、勤務先のパン屋の10歳も年上の娘(=濱野有希)と結婚を決め、その報告に訪れるという話も同じようなパターンであった。
面白かったのは中国人の妻が、かなり長い中国語の台詞で会話をし、ここは字幕が出るのだが、とてもリアリティがあって楽しめた。もしかしてこの青海衣央里という女優は中国語に堪能かそれとも本物の中国人かと想像すると楽しい。
それぞれの登場人物は存在感があるのだが、会話の裏側に
潜む感情のマグマが見えないのが不満だが、リアリティは充分に感じられたのであった。
その他の出演者。理科担当=田邊克彦 英語担当=柴山大樹
体育担当=山田百次 地歴担当=鳴海まりか 
教頭(農業担当)=木村くに 地歴担当=小笠原真理子 養護=木村元香 事務員=乗田夏子
この役柄でも分る通り、担当課目も緻密に決められており、そういう肌理の細かさが現実味を醸しているのであろう。
配役表には人物の姓名もきちんとそれらしく書かれている。例えばこの中国人は平沢鈴というのだが、平沢は夫の苗字だが、鈴にはいかにも中国人らしい名残が感じられる。