演 目
椅 子
観劇日時/08.7.9.
劇団名/TPS
公演回数/tps小文字で大作シリーズ
作/イヨネスコ 翻訳/安堂信也 
演出/斎藤歩 演出助手/弦巻啓太 
舞台監督/佐藤健一 舞台監督助手/岡本朋謙 
舞台スタッフ/深澤愛・伊佐治友美子・高子未来
制作/横山勝俊 
デイレクター/斎藤歩 プロデューサー/平田修二
劇場名/シアターZOO

全う出来なかった妄想者の悲哀

 様々な配役のうち、夫役が斎藤歩であり、やっと『椅子』らしい狂的偏執的な男の舞台が観られた。
妻(=伊佐治友美子)が極端に若いが、僕はこの話が、「人生を全う出来なくて死んだ夫の亡霊が、その恨みを述べて浮かばれない心境をぶちまけた話」という風に解釈すると、この妻は夫の回想の妻だから、こういう妻の方が的確なのかもしれないとさえ考えた。
その根拠は、最後の二人が海の飛び込んだということが、夫が死の世界に戻ったことを暗示し、その妄想の中の妻も夫の妄想と共に消えたと思われたからだ。
だから舞台装置の家も具体性を持たない造りであり、客は壁のどこからでも入って来るし、現実性の薄い玩具のような椅子もそうなのだと納得させられる。
そう見てくると、これは夫の一方的な恨み節であるが、所詮人間は何らかの未練を抱いて人生を終わるという、一種の不条理を表現した話といえるのだ。
斎藤歩の夫の演技を観ていて、そういう風に思われたのが
一番の収穫であったようだ。