演 目
夕坂童子

観劇日時/08.6.15.
劇団名/唐組
公演回数/第41回公演
新作 ◎ 作・演出/唐十郎 作曲/大貫誉 
舞台美術/劇団唐組 制作/劇団唐組制作部
デザイン/及部克人 原画/大鶴美仁音
表紙写真/藤澤邦見 データ作成/スタジオ・サラ
協力/兜カ化印刷
劇場名/東京・新宿・花園神社境内 特設紅テント

初志貫徹のミュージカル

 大分以前に「唐十郎の戯曲は僕にとって『何かを探す純愛の物語』である」と書いた。今日、久しぶりに唐組の新作を観たけど、その思いは変わらなかった。
十年一日どころか45年一日の如く、初志貫徹しているのは見事としか言いようがない。
劇団へ直接予約した観客はチケットに黒色で番号が書かれている。その数約百人、その他の方法で前売り券を買った人は青色の番号札を受け取る、その数は僕を含めて約二百名、当日券を買った人は赤い番号札で約百名、合計約四百名の観客が、巨大な紅テントの周りにひしめいて、劇団の制作部の人たちが大声で整理している。
これらも懐かしい風景だが、この45分ほどの入場準備の時間は、最近の僕にはちょっと負担が大きすぎる。だが見回すと僕くらいの男女の年配者もチラホラと見える。やはり思いを同じくする人たちなのだろうか?
花園神社境内の凸凹の地面に直接茣蓙を敷いた客席は、その上にある薄っぺらな座布団も人数分に足りない。それでも制作部の人たちは一所懸命に何とかやりくりしているのが微笑ましい。
舞台は浅草入谷の朝顔市。浅草のお化け屋敷で働く奥山六郎(=稲荷卓央)は、迷い込んだその朝顔市で、朝子(=藤井由紀)と夕子(=赤松由美)という二人の女に、別々に会う。
さまざまな不思議な人物が跳梁して、やっと夕子が坂の向こうに見つけた夕顔の花一輪、六郎は少年時代に逢った、夕暮童子にもう一度会ったような気がする。
何かを探す夕子と朝子、その二人に何かを見る六郎、というロマンチックなパターン……
狭い舞台に、夕日の乱反射する坂道が造られて、少々狭くて苦しい感じもするが、そんなことにはお構いなしに唄い踊り見栄を切るのは、まさにミユージカルだ。
リアリズムをまったく無視した舞台創りは、独特の表現であり魅力的である。これぞ唐十郎の世界なのだ。ちなみに奥山という名前は、浅草の奥山地区であり六郎はロック座であり、唐十郎の浅草に対する思い入れが感じられる。
いつもは最後に主人公が、開け放されたテントから見える現実の背景に消え去るのだが、今回は逆に開かれたテントから見える現実から虚構の舞台へと戻って来た。さてこれは何を意味するのだろうか?
今回印象的だったのは、二枚目の稲荷卓央に迫る勢いの丸山厚人の好演と、女優陣の成長であった。
ほかの出演者は、久保井研・鳥山昌克・辻孝彦・多田亜由美・野村千絵、そして唐十郎。その他大勢。