演 目
日射し

観劇日時/08.6.15.
劇団名/SPIRAL MOON
作/長堀博士 演出/秋葉正子 舞台監督/小沢真史
照明/南出良治 音楽/羽山尚 音響/齋藤瑠美子
美術/田中新一 チラシイラスト/秋葉陽子 
チラシデザイン/岡村一也 記録写真/竹内英和
企画製作/SPIRAL MOON・落合由人
劇場名/東京・下北沢 「劇」小劇場

家族の在り方

 三人姉妹・(日向=最上桂子・日知=環ゆら・日刈=秋葉正子)は、母親(=千吉良麻恵)が亡くなって、一人暮らしの父親(=小野坂貴之)の誕生日に、三人一緒に実家に集まってくる。
ところが父は留守で、見慣れない中年男・じい(=田中新一)と若い女・お嬢(=山本真規子)が、父に頼まれて留守をしているという。彼らは父母の過去を知っているらしいのだが、何か話がかみ合わない。
やがて出入りの豆腐屋で、次女・日知のかつての恋人(=松本恭典)が、父に頼まれたといって留守宅の猫に餌やりにやってくる。
父は、母と知り合う前、別の女性と深い恋をした。彼女は広島で被爆し差別を受けて東京へ来て父と知り合ったのだが、被爆者であったその女性は父の幸せを祈って郷里に帰った。
今、母が亡くなって父はその広島へ行っていることが豆腐屋の話で分かってくる。
自分たち三姉妹の誕生にも影響しかねない父母の過去を知って動揺する三姉妹。じいとお嬢とは何者なのか? 時代劇の家老とお姫様のような関係は何を表しているのか? 気がつくと二人は居なくなっている。
おそらく父は自分の幸福が終わって、かつて犠牲になった女性に会いに行ったのだろうと推測する。
そして、長女・日向は恋人(=東俊樹)の居るプラハへ行くことを決心し、次女・日知は豆腐ケーキで大成功した豆腐屋との幸せを考え、三女・日刈は父親の許で一緒に暮らすことを決意する。
その他の出演者、三姉妹の長兄で幼児に亡くなった少年の亡霊(=戸谷和恵)、居着いた野良猫の声(=大畑麻衣子)
ひとつ疑問がある。全体は旧家の和風座敷で演じられるのだが、プロローグが布をふんだんに使って抽象舞台を造り、そこで三姉妹が本を読むという形で父母や自分たちの過去を語るという構成になっているが、これは物々しい割には退屈
するし長すぎる。もっと違う方法の方がインパクトが強いだろう。
現に僕は全体がこのスタイルで演じられるのかと嫌気が差したころ、突然すべての布が取り払われてリアルな情景が現出しやっと観る気が起きたのだった。